医療事故が起こったときの解決方法として、まず頭に思い浮かべるのは「医療過誤訴訟」
かもしれません。ただ、実際には訴訟による硬直的な解決方法ではなく、より柔軟に紛争
を解決できる「ADR」という方法も選択できます。今回は、医療事故の際に利用できる
ADRとはどのようなものか、ご紹介します。

1.ADRとは
皆さんは「ADR」がどのようなものか、ご存じでしょうか。一般的に「裁判外の紛争解決
手続き」といわれています。つまり、裁判所を利用せず、各種の専門団体の仲介によって
トラブル解決を目指す方法です。平成19年に施行された「裁判外紛争解決手続の利用の促
進に関する法律」にもとづいて運用されています。
ADRには、さまざまな分野のものがあります。建築や請負、製造物や交通事故、事業再生
など、専門性を要するトラブルで、特にADRが有効です。同じく医療事故も専門的判断を
要するものですから、ADRによる解決が適しているといえます。

2.医療事故のADR
医療事故のADRにはいくつかありますが、弁護士会のものが有名です。全国の各弁護士会
が個別に運営しています。相談や仲介に入るのは、その弁護士会に所属する弁護士であり
、担当弁護士は、公正中立な立場から和解のあっせんや判断を行います。多くの弁護士会
のADRでは、普段患者側の代理人になることが多い弁護士と、普段病院側の代理人になる
ことが多い弁護士が両方関与することにより、患者側と病院側の公平を図っています。

ADRを利用すると、担当弁護士が間に入るので、患者と病院が直接対峙することがなく、
感情的になりにくいですし、解決案を提示してくれるので、解決につながりやすいです。
弁護士会による医療ADR以外には、医師会主導で設置運営されているものや医療関係者と
弁護士会、法学研究者が共同して運営している医療ADRなどもあります。

3.ADRのメリット
ADRのメリットは、柔軟に解決できることです。訴訟なら、勝つか負けるかのどちらかし
かありませんが、ADRであれば、中間的で妥当な解決を目指すことができます。また、時
間をかけずに早期に解決することができますし、訴訟ほど労力がかかりません。病院にも
患者にも痛みが小さい紛争解決方法といえます。

がん先端医療に関心をお持ちのみなさまにも、医療事故が起こるリスクは0とはいえませ
ん。今後のため、「医療ADR」についてぜひとも覚えておいてください。

医療ジャーナリスト(法律家)
福谷 陽子
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