前回、プロバイオティクスのお話をしました。これががん治療にどう影響していくのでしょうか。
この分野については正直まだ研究が不十分で、明確な臨床応用がされている部分は多くは
ありませんが、分かっている範囲のことをお伝えしたいと思います。

■造血幹細胞移植にもプロバイオティクス
血液腫瘍などでとられる造血幹細胞移植という、全身の白血球を抗がん剤で殺し尽くし、まっ
さらな状態にしてから新たな造血幹細胞を移植するという治療法があります。からだの抵抗
力をまったくゼロにしてしまうため、無菌室で入院しなくてはならないなど厳重な対処が取られ
ていますが、腸が雑菌の宝庫であり、腸内細菌も殺し尽くしておかなくては危険だと言われて
いました。事実、抗菌薬による腸内除菌もよく行われています。しかし現在、このような無菌管
理が必要な状態でも、移植片対宿主病といわれる移植した細胞が宿主を攻撃する症状に対
してプロバイオティクスが有効だと認められ始めています。

■弱った腸はすぐには使えない
もし化学療法を行って強い吐き気に襲われた場合、それが長期に渡るならば点滴での栄養
投与が必須になります。血管から栄養は十分とれていたとしても、薬と水くらいしか飲めない
時期が長く続くと腸はどんどんやせていきます。筋肉と同じで腸も使わないと衰えてしまうの
です。このときにプロバイオティクス・プレバイオティクスを考えた腸トレを適切に行っていくこ
とで、より早い回復、早い退院を期待することができるでしょう。もちろん、化学療法に伴う下
痢や便秘にも効果が期待できると言われています。

■発熱性好中球減少症とシンバイオティクス
以前記事の中でお話ししたように、化学療法により好中球が激減してしまうとからだの抵抗力
は著しく低下します。結果として、普段なら何ら悪影響を及ぼさないような細菌によって発熱
することがあります。これを「発熱性好中球減少症」と呼び、注意すべき副作用のひとつとさ
れています。これに対してシンバイオティクスを用いた腸トレを実施して発熱性好中球減少症
の程度の変化を観察した臨床試験がありますが、発熱や下痢の継続日数、抗菌薬の点滴使
用日数などで有意な改善が見られました。身近にあり何となく軽視されがちな食物繊維やビ
フィズス菌などががん治療の副作用を軽減するという大変興味深いものです。
この分野は冒頭でもお話したとおり、まだまだ未開拓なことが多い分野ですが、個人的にも興
味を持って研究をすすめている分野のため紹介させていただきました。いろいろと効果のほ
どが怪しい健康食品のような宣伝も多くありますが、こういう身近な食品の活用で治療の質を
向上できるというデータは、万人に取り組みやすく有益であると考えます。

薬剤師
深井

この執筆者の記事一覧

様々な副作用の対処法

がん治療の選び方

がん治療薬について

薬剤師の頭のなか

医療者コラム

PAGE TOP