さて、今回から再び抗がん剤の副作用についてお話していきたいと思います。抗がん
剤を投与してからだが弱ってしまう副作用として、よく吐き気・嘔吐・食欲不振が挙げ
られます。ですが、この味覚障害というのも非常に厄介で食が進まない大きな原因と
なってしまうことがあります。

■5つの味覚
人間には5つの基本的な味覚があります。
・ 甘み(糖)
・ うまみ(アミノ酸、コク)
・ 塩味
・ 酸味(酸性のもの)
・ 苦味(尿素)

脂っこさは遊離脂肪酸と関連していて、第6の味覚と言われています。味覚障害には2
種類あり、味覚の閾値(感じることのできる最低ライン)が上がることによっておこる味
覚減退症や無味症と、特定の味覚だけ感じ方に変化が起きる異味症です。
進行がん患者の約半数は味覚障害(嗅覚変化を併発することも)を経験するといわれ
ています。味覚障害の影響は想像以上になることが多く、食べる楽しみがない、それ
が解消されないことによる欲求不満、ストレスの蓄積。家族の食事を作っていた場合
はその自信の喪失や調理への恐怖などにつながります。

■3つの原因
進行がん患者さんの味覚障害には大きな3つの原因があります。

・ 全身性の炎症
・ 亜鉛欠乏などの栄養不足
・ 薬や放射線の副作用(味覚そのものへの影響、唾液への影響)

原因が亜鉛欠乏の場合は摂取により改善することもありますが、がんによる全身性
の炎症や抗がん剤によるものだとなかなか原因を取り除くことが難しくなります。残念
ながら、場合によっては治療終了後であっても症状が改善せず苦しまれている人が
いるのも事実です。

■できることから試してみる
味覚障害は非常に厳しい副作用ではありますが、できることから一つずつ取り組んで
みましょう。もう治らない味覚障害かと思いきや加齢や薬(抗がん剤に限らず)による
口内乾燥が原因で、食事の前に1杯お茶や白湯を飲むだけで劇的に改善した人もい
ます。口腔内と歯が清潔に保たれるように歯科衛生士さんに歯磨きやケアの助言を
もらったり、口腔乾燥を予防するジェルなどを活用したりすることで改善するケースも
あります。

味覚が低下しているような味覚減退症の場合はレシピの工夫を試してみるべきでしょ
う。例えばピクルス、ビネガーやレモンなどを使った酸味の強いもの、果物などさっぱ
りとした後味のよいもの、好みに合わせて砂糖の量を調節してみる、白身の肉や卵、

乳製品を活用することで食べ物に含まれる尿素の量を減らす、濃い味の調味料を多
めにつかった味付けを試してみる、冷やした食べ物や飲み物を多めにしてみるなどです。

どうやっても改善しないケースは残念ながら存在します。私自身、食べることは大好
きですし、家族や仲間とおいしい食事を囲むことは何よりも楽しくすばらしいことだと思
います。いろいろな方法を試して、少しでもおいしく食事が摂れるようになれるとよいですね。

薬剤師
深井

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