「え、再検査?」
そう聞き返すと、母は「そう。要検査ってところにチェックされててね」と少し不安そうな表情で答えました。

毎年定期的に受診している健康診断で、念のために受けた乳がん検査で「要検査」に印が付いていたというのです。

「それで絶対にそうってわけではないみたいなんだけど、まぁとりあえず再検査に行ってみるわ」

家系的に乳がんになった親戚がおらず、私たち家族には「まさか」という思いがありましたが、その時は母が再検査に行き、その結果を待つことしかできませんでした。

再検査に行ってきて、結果がすぐに出たと思いきや「すぐ精密検査だって」という事で、これはいよいよ怪しいという事で、この頃既に私たちの「予感」は「確信」に変わりつつありました。
どんな結果であっても、受け入れよう、という覚悟を作るには割と十分な時間が与えられました。

当時、私は26歳で、妹は20歳でした。
もう大人になっていたので、母の精密検査の結果と向き合う覚悟は比較的容易にできたように思います。
父は定年を過ぎ、延長して働いていた仕事が1年以内に終わる予定でした。

そして、精密検査が終わってから、母から「先生が家族に説明をするから、結果は全員で来なさいって」と告げられて、いよいよ確信が確固たるものになりました。
まだ「がん」という宣告は受けませんでしたが母自らが「先生から直接聞いてはいないけれど、がんだと思う」と言っていました。

会社に早退の申請を出して、少し早く上がり、病院へ駆けつけました。
どうにか間に合い、家族揃って先生の話を聞くために部屋に入りました。

先生は気難しそうな雰囲気で、ぶっきらぼうに「では、先に結果を言っちゃうとね、お母さんは、乳がんです」とだけ短く伝えました。そして、次に続いた言葉は意外なものでした。
「大丈夫ですか?ショックとか受けてませんか?このまま進行度合いと治療法の説明に入って問題ないですか?」と続いたのです。

私たち全員、確信をもって結果を聞きましたし、覚悟も既に出来上がっていたため、母本人含め誰も取り乱したりはしませんでしたが、やはり結果を受け入れられずに泣き出したり叫んだり先生に食ってかかるような方もいらっしゃるそうです。
先生は、逆に誰も動じず「大丈夫です」と言う私たち一家を物珍しげに一瞥して、がんの状態と治療法を説明するために再び口を開きました。

がんの患者会
母と家族のガンとの闘病記

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