前回は肝臓がんの検査内容を大まかにお話しましたが、今回は血液検査の内容をじっくり
みていきましょう。

1. AST(GOT) 基準値:10-35 IU/L以下
ASTは肝細胞に多く含まれる物質で、他にも心臓や腎臓などの臓器に多く存在してい
ます。肝細胞が破壊されることによってASTの血液中濃度が上昇します。肝臓に特有
の検査ではないので他の検査結果と合わせて評価します。肝障害を推定するために用
いられます。
   
2. ALT(GPT) 基準値:5-40IU/L以下
ALTは肝細胞のなかに存在している物質です。肝細胞が障害されると血液中のALT濃度
が上昇します。肝臓の障害を推定するために用いられます。
   
3. ALP 基準値:100-320 IU/L
ALPは肝臓や腎臓などのさまざまな細胞でつくられます。胆汁のなかにも存在します
。胆汁のうっ滞が生じるとALPが増加します。肝障害が胆汁のうっ滞によるものかを
判断する材料になります。ALPが増加している場合は肝臓の病気以外にたとえば骨の
形成が強くなっている時にはALPが増えます。このため子どもでは成人よりもALPの検
査値が高いのが普通です。
   
4. γ-GTP(ガンマジーティーピー) 基準値:10-90 IU/L
γ-GTPはALPと同様に胆汁のうっ滞を反映する値です。胆汁のうっ滞や胆管細胞の破壊
が起きるとγ-GTPが上昇することが知られています。アルコールの多飲などで上昇し
ます。
 
5. コリンエステラーゼ 基準値:200-460 IU/L
コリンエステラーゼは肝細胞のみで作られる物質です。肝臓で作られて血液中に放出
されます。肝炎や肝硬変などで肝臓の機能が低下しているとコリンエステラーゼをつ
くる力が減少します。
   
6. アンモニア 基準値:12−66 μg/dl以下
アンモニアの血液中での濃度が上昇すると肝性脳症の原因となります。食べ物のなかの
タンパク質や腸の分泌液に含まれる尿素が腸内細菌によって分解されてアンモニアが発
生します。アンモニアは毒性があるので肝臓に運ばれ、無毒化されて尿のなかに排泄さ
れます。肝臓の機能が低下している場合はアンモニアを無毒化する力も落ちているため
アンモニアの血液中での濃度が高まって肝性脳症が起きることがあります。

7.血小板 基準値:15-35万/μl
血小板は血液を固める役割を果たしていて、肝臓がんの方では血小板が減少することが
知られています。肝臓がんの多くは肝炎や肝硬変という慢性的な肝臓の病気を背景にし
て発生します。特に肝硬変では肝臓が固くなり、肝臓に流れ込む門脈という血管の圧が
かなり高い状態になってしまいます。この状態を門脈圧亢進(こうしん)症といいます
。門脈圧亢進症の状態では肝臓に流れ込む血液が脾臓に流れるようになります。脾臓で
は血小板の破壊などが行われます。脾臓(ひぞう)への血流増加のために血小板の値が
低下します。脾臓では白血球や赤血球の破壊も同時に行われています。血小板のみなら
ず白血球や赤血球も減少することがあります。血小板の数で肝硬変の程度を推測するこ
とができます。

8.ビリルビン 基準値:0.3-1.5 mg/dl
ビリルビンは赤血球が壊れて出てくる物質です。血液中のビリルビン濃度が高まると皮
膚や白眼などが黄色くなる黄疸の原因になります。肝臓の機能を推定するのに使う項目
の一つです。

9.アルブミン 基準値:4.0-5.0g/dl
アルブミンは肝臓で作られるタンパク質の一つです。アルブミンは血管のなかに水分を
保ったり、他の物質と結合したりして物質の運搬をするなどの働きがあります。アルブ
ミンが減少すると水分が血管から出ていきます。水分はお腹のなかや胸のスペースに溜
まります。肝臓の機能を評価する方法の項目の一つです。

10.プロトロンビン 基準値:70-140(%)
プロトロンビンは肝臓で作られる止血に関わるタンパク質です。肝臓で作られるので肝
臓の機能が低下するとプロトロンビンが低下します。肝臓の機能を評価する方法の項目
の一つです。
   
11.AFP 基準値:10.0ng/mL
AFPは胎児が作るタンパク質です。出生後はAFPの血液中での濃度は低下します。肝臓
がんはAFPを産生することがあり、慢性肝炎や肝硬変でも血液中の濃度が上昇すること
が知られています。つまりAFPが上昇したからといって肝臓がんとは限らないことには
注意が必要です。

12.AFPレクチン分画(AFP-L3分画) 基準値:15%以下
AFPは肝臓がんがあると数値が高くなります。しかし肝炎や肝硬変でも数値が高くなる
ことがあります。AFPはさらに細かく分けることができます。AFP-L1、AFP- L2、AFP-
L3の3つです。このなかでもAFP-L3が肝臓がんと関係が強いことが知られています。

13.PIVKA-II(ピブカ・ツー) 基準値:40mAU/mL未満
PIVKA-IIは肝臓で作られる血液を固める物質の一つです。肝臓がんでPIVKA-IIが上昇す
る理由についてはまだ不明な点がありますが、肝臓がんの腫瘍マーカーとして使われて
います。肝臓がん以外でもビタミンKが体のなかに不足していたりワーファリンという
薬を飲んでいたりすると上昇することがあります。
   
これらの検査はすべて医療機関で検査されている基本的なものです。肝臓障害を進行させ
ないためにもがんの進行を遅らせるためにも、専門家に相談できる環境が大切になってき
ます。気になるどんな小さなことでも相談してくださいね。

臨床検査技師/緊急検査士
石﨑 沙織
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