今回は抗がん剤投与を行うまさにその時に起こる副作用である薬剤過敏反応についてお話
しましょう。薬剤過敏反応は抗がん剤にのみ起こるわけではありませんが、起きる可能性が
ある薬剤はある程度決まっています。

もし、ご自分やご家族が抗がん剤を投与する際は、その種類を確認し過敏反応のおそれが
あることを認識していただくことが重要です。薬剤過敏反応は重症化することもあり、初期対
応に遅れると命にかかわることもあるからです。事前知識があればもしものときに油断せず
ナースコール等で知らせられることにもつながり、重症化を避けることもできます。


■アレルギー反応とInfusion reaction

薬剤過敏反応にはアレルギー反応とInfusion reaction(インフュージョン リアクション)といわ
れる2種類があります。それぞれ発現様式や機序の違いにより分類されていますが症状は共
通しており、軽症ではくしゃみ、吐き気、蕁麻疹(じんましん)、ひどくなるにつれ、顔面蒼白や
発汗、冷や汗を伴い、発熱、悪寒、呼吸がしにくい、頻脈、ふるえ。重症化すると脈が弱くなり
、血圧が急激に下がり、不整脈、痙攣、呼吸困難などが起きることが多いといわれています。

■点滴中に発現するアレルギー反応
アレルギー反応は点滴投与中30分以内に起きることが多いといわれています。また、1度起
きてしまうと再度投与することで重症化することがあり、その判断は慎重に行う必要があるで
しょう。注意するべき薬剤は以下の通りです。名称は薬効成分名になります。

・ パクリタキセル(治療開始初期、投与1時間以内に好発)
・ ドセタキセル(初回、2回目の投与で起きやすい)
・ L-アスパラギナーゼ(毎週投与を1カ月以上続けた時、投与1時間以内に好発)
・ シタラビン(大量投与療法で起きやすい)
・ オキサリプラチン(6〜8回目の投与で起きやすい)
・ カルボプラチン(6〜8回目の投与で起きやすい)

特にL-アスパラギナーゼやシタラビンは発現頻度が2〜3割ともいわれているため注意が必
要です。6〜8回目の投与で危険性が大きくなる薬剤は患者さんも慣れてきたころに危険性
が増すため、特に注意が必要でしょう。その他にもまれに出現する薬剤は多くありますが、ど
れも頻度としては1%以下ほどで抗がん剤として特異的に起きる、というよりは薬というものに
共通した症状と捉えられています。

■帰ってからも危ないInfusion reaction
Infusion reactionとは第5回でお話した分子標的薬という種類の点滴で特徴的に起きる副作
用です。初回投与の際に起きる危険が最も高く、投与後24時間後ほどまでは危険性が持続
するため、初回の投与を外来治療で行った際は帰宅後でも注意が必要です。1度問題なく終
えれば2回目以降の投与では危険性が軽減されていく傾向があります。

Infusion reactionはキメラ型抗体といわれる、リツキシマブ、セツキシマブなど、語尾が「キシ
マブ」で終わる分子標的薬で多く報告されています。これらのキメラ型抗体は人間にとって「
合わない」ことが多く、Infusion reactionも少々起きる危険が多くなります。頻度が高めなリツ
キシマブでは10%以下ほどの頻度で発症するといわれています。トラスツズマブやベバシズ
マブなどの「ズマブ」で終わる分子標的薬はヒト化抗体といわれ、キメラ型よりは安全ですが
、1%ほどの頻度でInfusion reactionが報告されています。

症状を考えると非常に怖い過敏反応ですが、どうしても人によっては起きてしまう可能性があ
る副作用です。大事なのは「点滴中から翌日までに何かおかしい、と思う兆候があればすぐ
に知らせる」ということでしょう。早期に対応すれば問題ないケースも多くあります。

また、今回表記した発現頻度は何も対策しなかった場合のものになります。実際は過敏症や
Infusion reactionの恐れのある薬剤を投与する場合はそれを予防する薬剤を併用することが
一般的です。そのために眠気や口の渇きが起きてしまうことはありますが、それは治療の安
全性を向上させるために必要な薬剤であることをご認識いただけると幸いです。

薬剤師
深井

この執筆者の記事一覧

様々な副作用の対処法

がん治療の選び方

がん治療薬について

薬剤師の頭のなか

医療者コラム

PAGE TOP