こんにちは。あまり副作用の話が続くとうんざりしてしまう人もいるかもしれません
ので、今回は少し離れてみようかと思います。

突然ですが、自分や大切な人の死を皆さんはどのように考えていらっしゃるでしょう
か。世の中、多くの場合はそのことを避けられない現実だと理解しつつもどこか非現
実のように認識しているのではないでしょうか。全ての人はいつか亡くなってしまう
という現実は、医学や科学が進歩した現在でもまだ解決できない問題です。

私は薬学部を卒業し、新卒で今の職場に勤めました。来院される患者さんのほとんど
ががん患者さんという病院です。正直、自分などにその仕事が務まるのか不安でした
し、どのような顔をしてお話しに行けばいいのか非常に悩みました。ですが、いざ病
棟で患者さんを訪ねると、非常に気さくで、がんを感じさせない人が大多数だったこ
とにとても驚いたことを覚えています。そんな患者さんに囲まれて、すこし仕事にも
慣れてきた頃に言われた、ずっと心から離れない一言があります。

その言葉は、胃がんのStage4、肝臓にいくつも転移しており、無治療ならばおよそ半
年、治療をしても1年もつかどうかという状態の60代の女性の一言でした。女性は、
抗がん剤による延命治療を行うために入院していました。

「わたし、がんで本当に良かったと思っているの。」

思わず、「えっ?」と聞き返してしまいましたが、同室の似たような状況の患者さん
らが一斉に「そうだ、本当にそうだね」とおっしゃっていたのです。戸惑いながら詳
しく聞いてみると、「がんは余命を教えてくれる。それは納得いかないこともつらい
こともたくさんあるけど、いきなり事故とかで急死したら、何も遺せない。脳梗塞な
どで動けなくなったりしゃべれなくなったりして何年もまわりに世話になるのも嫌だ
し、そう考えるとがんも悪いものじゃないのかなと思うようになった」「いつ死んで
も悔いは残るものだけど、逆にそれは楽しみに恵まれた人生だったという喜ばしいこ
と。いつかはみんな死を迎えるのだから、それに向かって支度ができる自分は恵まれ
ている」と話されました。

そこに至るまでどれだけの葛藤やつらさがあったか、がんではない自分には推し量る
ことすらままなりません。誰もが到達できるような考え方ではないのかもしれません
が、予後が見えてしまった患者さんに少しでもそう思ってもらえるように寄り添うこ
とも我々医療者の大切な務めなのかもしれないと、強く考えさせられました。

生きることと死ぬこと。死を意識しながら生きることの難しさというのはそれから5年
間ずっと患者さんと関わってきた今もまだ分かりません。簡単に折り合いがつくこと
でもないでしょう。でも自分が今、死が目の前に見えた時にどう死にたいと思うだろ
うか、と前向きに考えるきっかけになりました。治療を頑張っているときは死という
ものを遠ざける一心で頑張ることが普通ですし、そういうときになかなかできる話で
はありません。分かったようなこともとても言えません。ですが、まだ元気なうちに
、一度、死についてある意味前向きに、思いを巡らすことは大切なことなのかもしれ
ないと私は思います。

薬剤師
深井

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