母の乳がん摘出手術の翌日、会社帰りに病院へ立ち寄りました。
母のいる部屋に向かい、ベッドを覗くと、そこには誰もおらず、あれ?と思っていたら背後から「来てくれたの」と声をかけられました。
振り返ると、普通に立っている母の姿があり、少しびっくりしました。

「もう歩けるの?」
そう聞くと「うん、全然ヘーキよ」としたり顔で返してきました。

2月に急性盲腸で緊急入院した母の方がよほど弱々しく、今回の母はすこぶる元気だったようです。
もともとジムに通うなど身体を動かすことが好きな母で、ジムに通い始める前は毎日1時間ほどウォーキングを欠かさず行う習慣だったので、病院でもあちこち歩き回って万歩計に歩数を溜め込んで喜んでいたようです。

「病人とは思えないでしょ」とニヤリと笑う母。

それから少し母と談話室で話をしました。

がん細胞が結局本当に死滅してしまっていたのかどうかは、今検査にかけているところだから、まだ分からないという事でした。
1週間ぐらい後になって結果が届いたのですが、なんと健診結果の通り、がん細胞は死滅し、もうすっかり無くなっていたという結果でした。

そこで「だったら手術しなくても良かったのね・・・」と落ち込むような母親ではございません。
「分かって良かったわー!スッキリした!」とカラカラ笑い、「抗がん剤のパワーってすごいのね~」と感心していました。
「お母さんを苦しめてくれただけあるわ」とも言っていたので、がんと闘っていたのか、抗がん剤と闘っていたのか、きっとその両方と激闘を繰り広げていたんだろうな、と思いながら母の発想の豊かさに舌を巻きました。

病室では、父が作った旅行の思い出DVDをよく見ていた母は、ある日父に「うちに届いてる旅行のパンフレット持ってきて」とお願いしたらしく、別の日に病室を訪れたら、パンフレットの端を折りながら目ぼしい旅行を探している母の姿がそこにあり、早くも旅行計画を立てている・・・!と驚きました。

来年にはもう自由に身動き取れるようになってるはずだから、今から探しておく、だそうです。

やはり好きな事というのは、人間を突き動かす力がありそうです。
母がいそいそと旅行に夢を馳せている姿は、人間の生きる喜びや、生きる意義のようなものを感じさせて、私も自分の命を大切に、やりたい事をやろう、と密かに決意しました。

がんの患者会
母と家族のガンとの闘病記

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