前回からの続き

がんが早期でないかぎり、うっすらと「もしかして、いつか自分は、がんで死んでしまうのではないか」という疑いを抱くことがあるかもしれません。あなたのがんが初発であって、根治を目指した治療を組み立てている限りは、こうした思いに支配されてしまうことは少ないでしょう。しかし、そうした場合でも、心の片隅にこうした思いがよぎることはあるかもしれません。

がんがあなたにおこす「揺さぶり」のなかで最も強く、つらいものはこの「あなたをかすめた死の可能性」ではないでしょうか。ほとんどの人は口先ではどうあれ、本当の意味で「自分も死ぬ」ということを、リアリティをもって感じたことは無いはずです。この生まれて初めて目の前に突きつけられた「自分の死」のリアリティのかけら、に向かい合う必要が出てきます。

ほとんどの場合、あなたは(根治を含め)試みるべき治療を提案されている、または自分の死を強烈に実感させられるほどの症状を感じていないという状況にあると思います。ですから、あなたが向かい合うのは、「あなたの死」そのものではなく、あなたの死のリアリティの「かけら」です。

この「死のリアリティのかけら」は一定の大きさのものではなく、状況によって大きくなったり小さくなったりします。がんを告知されたその瞬間は、あなたを押しつぶしてしまうくらい大きく膨らんでいるかもしれません。そして、早期のがんであり、十分根治できると実感を持って理解できたときには見えなくなるくらい小さくなっているでしょう。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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