前回では、AIの動作原理を簡潔に紹介しました。ここからはいよいよその原理を医療に応用した例を紹介します。まず第一回は、医療用画像診断についてです。

医療用画像とは、皆さんも健康診断で経験したことがあるMRIやCTスキャンの画像、さらには病理診断という、病気の患者さんの細胞や組織をごく一部切り取り、病理医が顕微鏡によって病変部位を観察して診断する方法に使われる顕微鏡像などがあります。これらの画像から病気を診断するAIの開発は、医療用AIの中でも最もさかんに研究されている分野の一つです。

■原理的に画像診断とAIは相性が良い
なぜ画像診断AIがホットな領域なのかには理由があります。それは、動作原理から考えて、画像解析はAIに向いているからです。

前回の記事で紹介したAIの動作原理を振り返りましょう。入力値と正解が合わさったデータセットをたくさん学習させ、統計学的に信頼できる予測機を作ることがAIの学習の原理でした。ここで、医療用画像について、ある一枚の画像を例えば100×100の正方形のマス目で割し、左上から順に1,2,…100,次の100マスの列には101,102…と番号を振り、これらのマス目の色調を入力値とします。加えて、実際に人の体を撮影した画像なので、この画像が病気の人のものか否かは当然わかりますから、正解もわかります(病気=1,健康=0のように割り振る)。このようにした大量の画像データを学習させれば、AIは「〇番が〇色のときは病気の人の確率が高い」や「△番が△色でかつ×番が×色なら健康な確率が高い」などのようなパターンを学習し、画像診断AIが作れる、ということです。

■現段階と今後の展望
医療用画像診断用AIの研究は現在最も盛んな領域だけあって、ベンチャー企業レベルから、国内では理化学研究所のような大規模な研究施設レベルまで、幅広く研究が展開されており、乳がんのリンパ節転移の検出に関して、人間の医師と同じレベルで正しい診断をした、という研究結果も出ています。もちろん画像ばかりでなく、他の検査数値も学習データに組み込むことで、AIの診断性能は飛躍的に増すことが期待されます。

今後は、実際に診断する医師の強力なツールとして、こうした画像診断AIを、さまざまな疾患に応用できるように多様化かつ精密化することで、医療技術の向上が期待されています。

次回は「医療とAIのコラボレーション―2 言葉による病態把握ができるAI」についての解説をお送りいたします。

医療者編集部
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