前回は、医療用画像診断AIについて解説しました。今回は医療用AIとしてもう一つホットな研
究分野である、言語によって病態や診断所見を理解できるAIの研究について紹介します。近
い将来、受付から問診までAIが行う…ということもあるかもしれません。

■動作原理
言葉による病態把握を行うAIが現在どのような発達の状況なのか紹介する前に、まずは理
論的側面を紹介します。このようなAIに適応されるのは「自然言語処理」という理論です。これ
は、機械が言葉の意味を理解したり適切な応答をするなど、言語を機械的に処理するための
理論であり、わかりやすいところでは、最近話題の女子高生AI「りんな」は、この自然言語処
理を行うAIの一つです。

これには「リカレントニューラルネットワーク」という、第2回で解説したニューラルネットワーク
の一種が用いられます。原理の詳細は専門的となるので割愛しますが、リカレントニューラル
ネットワークとは簡単にいえば「時系列も処理対象としたニューラルネットワーク」と言えます。
言語とは当然ながら、正しく意味を伝えるためには単語の順番が重要であり、その順番を時
系列として扱うため、自然言語処理とリカレントニューラルネットワークは密接な関係にあるの
です。

この原理を用い、例えば「〇歳男性。〇〇のり患歴あり…」などのような、医療と関連ある文
章を学習することで、言語による病態を把握できるAIが完成するのです。

■現在までの成果
こうした医療言語処理AIとして有名なのは、IBMの開発したWatsonです。Watsonは2011年に
アメリカのクイズ番組で人間と勝負して勝つなどの成果を上げてきましたが、2015年には医療
界においてもその名をとどろかせます。膨大な数の医学論文を学習したWatsonが、なんと人
間の医師でも見抜けなかったがん患者の病態を正しく把握し、適切な治療法までも示せたの
です。この結果は全世界に衝撃を与えました。

また2017年には、中国の名門・清華大学と中国企業が共同開発したAIが中国の医師国家試
験に合格したというニュースまでもが飛び込んできました。世界各国で、言語的理解のできる
医療用AIは日進月歩で発展しています。

画像診断AIも含め、ここまで進歩した医療用AIですが、実際の診療の現場では事情がもっと
複雑で、予期しないことも頻繁に起きるため、まだAIは人間の補佐役にしかならないという見
方が大半です。人間はまだまだ医療現場には必要とされるということですね。

次回は臨床の現場を少し離れたトピックとして「医療とAIのコラボレーション―③脳とつながる
コンピューター」に関しての解説をお送りいたします。

医療者編集部
医療AIラボ
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