今回から2回、ノーベル賞の薬についてお話してみます。2018年10月1日に京
都大高等研究院の本庶佑教授が、免疫を抑制する分子である「PD-1」を見つけ
た功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。これはこのコラムでも
度々取り上げている薬剤「ニボルマブ」(報道では商品名である「オプジーボ
」が多く、こちらのほうになじみがあるでしょうか)の開発に多大な貢献をも
たらしたと言われています。

■がんは体の免疫機能から身を隠している
もともとがん細胞は自分のからだの細胞の一部であることは、かなり一般に広
く知られるようになってきました。私たちのからだでは一日に3000億個の細胞
が日々死に、そして誕生していくことで生命の恒常性が保たれていると言われ
ています。このなかでいくらかの細胞は分裂の際にエラーが起きてしまい、が
ん細胞となります。これは健康な人でも必ず起きていることで、私のなかでも
起きているでしょうし、これを読んでいるあなたにも起きているはずです。で
は実際にがんとして発病しない理由は、これらのエラー細胞を免疫がやっつけ
てくれているからです。(排除相と呼ばれます)

ところが、ある段階からがん細胞は自分ががんであることを免疫にバレにくく
する擬態のような働きをしたり、免疫の働きを抑え込んだりするようになりま
す。そうして免疫から逃れたがん細胞が徐々に残存していき(平衡相)、いつ
か生体内で増殖へ転じ、「がん」が発症してしまいます。(逃避相)

■PD-1とは
がん細胞は上記のような経緯をへていきますが、PD-1とは、がん細胞が免疫の
働きをOFFにしてしまうスイッチのようなものです。これを抑え込まれると、
免疫はがん細胞を攻撃・排除できなくなってしまい、がんが増悪(ぞうあく)
してしまうことになります。これらを免疫チェックポイント分子と呼びます。

この免疫の働きをOFFにするスイッチをがん細胞からガードする薬、それが「
ニボルマブ」というわけです。スイッチをOFFにされることなく、がん細胞を
しっかり免疫(T細胞)が攻撃できるようにすることで抗腫瘍効果を発揮する
と考えられています。これは今までの抗がん剤のように細胞の分裂周期そのも
のを止める、がんに特徴的に現れる分子を狙って攻撃する、といった方法とは
大きく異なる、まさしく画期的なものでした。

では、この画期的な薬は実際のところ、実臨床でどうなのでしょうか。

次回その話について掘り下げてみたいと思います。

薬剤師
深井

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