前回は、がん告知後の落ち込みから、気持ちを立て直す重要性についてのお話でした。今回は、
手術までのすごし方についてお話しします。

■がんには安静が必要?
昔から、「病気のときは安静に」と言われてきました。
がん患者さんの中にも、手術まで安静が必要と思い込み、仕事を休んだり、昼頃まで寝ていたり、
病院の受診日以外は家で一日中横になって過ごしたりする人がいます。

もちろん、貧血や心臓の機能低下など全身状態が悪いがん患者さんの場合には、安静が必要な
こともあります。しかし、風邪などの感染症や、発熱を伴う消耗性の病気と違って、がん患者さん
に安静は必要ないばかりか、むしろ弊害となるのです。

そもそも、がんは「からだを動かさない」ことが原因となる病気でもあります。つまり、多くの研究か
ら、定期的な運動をしない活動性の低い人、座って過ごす時間が長い人、昼寝の時間が長い人
のほうが、がんになりやすいことがわかっています。
手術前に体を動かさない生活を続けると、体力(持久力と筋力)が低下し、手術後の合併症が増
える原因ともなります。

■活動的で規則正しい生活をしましょう
がん患者さんは、手術までの間、活動的で規則正しい生活を続けることが重要です。早寝早起き
を心がけ、外に出て積極的に体を動かす生活を心がけましょう。
できる限り仕事や家事も続けてください。家族や周囲の人も、これまで患者さんがやっていたこと(
食器洗いやゴミ出しなど)を取り上げないようにしましょう。気を利かせてやってあげることが、むし
ろ患者さんにとっては害となるのです。

■手術前のリハビリテーション(プレリハビリテーション)
最近、手術後の合併症を減らし、回復を早める目的で、手術前から積極的なリハビリテーション(
プレリハビリテーションといいます)を導入する病院が増えつつあります。実際に、プレリハビリテ
ーションによって、手術後の傷の感染や肺炎などの合併症が減ったという報告もあります。

プレリハビリテーションのプログラムは病院によって違いますが、栄養補給と運動療法(有酸素運
動とレジスタンス運動)に、心理療法(不安・ストレス軽減)を組み合わせたものが一般的です。が
んの手術を控えた患者さんは、主治医と相談のうえ、毎日のウォーキングやスクワット、ダンベル
運動などをぜひ取り入れてみてください。

いずれにしても、手術までは安静にせず、積極的に体をうごかしましょう。それが、手術を成功さ
せ、完治への道を切り開く近道なのです。

医師・医学博士 消化器外科専門医/がん治療認定医
佐藤 典宏

産業医科大学 第1外科 講師
1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医・指導医の資格を取得。がんに関する基礎研究にも従事し、これまでに発表した論文はおよそ200編(うち130編が英文)。がん患者さんや家族にむけたブログ「あきらめない!がんが自然に治る生き方」。著書に「ガンとわかったら読む本(マキノ出版)」

PAGE TOP