前回からの続き

こうしたがん相談支援センターは人口の少ない県にも、最低4カ所程度は整備されていますから、離島に住んでいる場合などのケースを除けば、比較的アクセスがしやすい状況にあると思います。この機関はがんの患者本人だけでなく、その家族や職場関係者に至るまで、間口を限定しない幅広い相談受け入れが特徴です。また、実際にがんになった人がいなくても、たとえば「がん検診についての情報がほしい」など、がんに関係するさまざまな相談を受け付けてくれます。

そして、その相談形態はほとんどの場合、「ケースワーク」の形をとってくれるはずです。このケースワークという言葉は日本ではまだあまりなじみのないものかもしれません。すこし脱線しますが、ここでこのケースワークというキーワードについて解説します。

ケースワークも実は「相談」の一形態なのですが、そもそも、「相談」というものは大変幅広い概念です。たとえば、対面式の占いも「相談」の形態をとることがほとんどです。また、服選びの際にショップ店員との間で行われる、客の好みの提示とそれを満たそうとする店員のやり取りなども一種の「相談」といえます。このように、なんらかの問題やニーズを抱えたクライアントに対し、コンサルタントが問題解決の方法を提示するのが「相談」の枠組みです。

通常の「相談」の場合は、コンサルタントの専門性が初めから固定されているため、クライアントが自分の問題の性質をよく理解し、どの分野の専門家に持ち込むのが適切かを、前もって吟味しておく必要があります。なぜなら、問題を持ち込まれるコンサルタントの側も、自分の専門性を発揮することが「クライアントにとって本当に最高の解決法となるのか」を考えることをしないからです。

たとえば、DVやアルコールなどの問題を抱えるカップルがいたとして、そのカップルが「相談」を持ち込める場所は多岐にわたります。法律事務所、心理カウンセラー、警察、市役所などの公的サービス、精神科などの医療機関…等々です。それぞれは大変有用な相談機関であることには間違いないのですが、専門性と解決に向けての方向性と方法論が大きく異なるため、「相談」する機関を間違えてしまうと、より問題を複雑化させてしまうことがあります。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

この執筆者の記事一覧

がんと診断されたあなたへ

PAGE TOP