パップテスト標本にダブル染色検査を実施すると二種類のたんぱく質:p16(茶色)とKi-67(赤)が検出されます。 画像提供:米国国立がん研究所パップテスト標本にダブル染色検査を実施すると二種類のたんぱく質:p16(茶色)とKi-67(赤)が検出されます。
画像提供:米国国立がん研究所

米国国立がん研究所(NCI)が主導した研究により、新しい検査法を用いると子宮頸がんの定期健診でヒトパピローマウイルス(HPV)が陽性だった女性の臨床管理をより適切に行えることがわかりました。

この検査はp16/Ki-67ダブル染色法と言い、現在HPV陽性の臨床管理に用いられるパップテスト(子宮頸部の細胞をブラシでこすりとる細胞診)と比べてHPVに感染した女性が5年以内に子宮頸部の前がん病変を発症するかどうかをより正確に予測できました。

子宮頸がんのスクリーニングにおいてHPV検査が中心的役割を果たすようになるにつれ、「HPV陽性のケースをどう管理(トリアージ)するかが課題となっています」と話すのはNCIの腫瘍・遺伝学科(DCEG)シニア研究員、ニコラス・ウェンツェンセン医学博士・博士です。

ダブル染色法ではパップテスト検体内にp16とKi-67という二種類のたんぱく質があるかどうかを測定します。これまでの研究で、この二つのマーカーの組み合わせた方がパップテストを行うよりもHPV陽性の女性のうち前がん病変のある患者を正確に特定できる可能性が指摘されていました。

今回調査主任を務めたDCEGのメガン・クラーク博士・健康科学修士は、この研究は非常に重要な問題に取り組んでいると言います。すなわち「HPV陽性でもダブル染色検査の結果は陰性だった女性は、どのくらいの間隔をあけて何回くらい再検査を受ければいいのか」という問題です。

研究チームは10月11日のJAMAオンコロジー誌において、(対象者を時系列で追跡する)前向き研究では、HPV陽性でもダブル染色検査の結果が陰性だった女性はその後5年間で子宮頸部の前がん病変を発症するリスクは低かったと報告しました。従ってこうした場合は次回の健診まで3年は安心して待ってよい、と結論付けています。

「これは非常に意義深い研究です」と話すのはバージニア大学医学部の外科病理学・細胞病理学副部長、マーク・ストーラー医学博士です。米国内で実施された研究のうち、パップテストよりも「(ダブル染色)の方がトリアージ検査として優れているという確証が得られる」初めてのものだと言います。

米国における子宮頸がんスクリーニング

性交渉によって感染するヒトパピローマウイルスの種類はたくさんあり、うち12種類が子宮頸がんやその他のがんの原因となることがわかっています。HPV感染はごく一般的ですが、通常は免疫によってコントロールされているため、がんにはなりません。しかし感染状態が長年続くと細胞が変化し、最終的にがん化する場合があります。

こうした初期変化を見逃さないよう子宮頸部細胞にHPV感染がないかどうかを調べるのは現在標準的なスクリーニング方法として推奨されているため、がん化する恐れがあるHPV感染(フォローアップが必要なケース)と、当面は観察してよい感染を見分ける方法の研究が続けられています。フォローアップ処置としては子宮頸部の異常部位の生体検査を行うコルポスコープ検査などがあります。生検で確認された前がん組織は、いくつかのやり方で取り除くことができます。

子宮頸がんのスクリーニングに関する現行ガイドラインでは、以下の3つのいずれかを推奨しています:①パップテストのみ、②HPVテストのみ、③二つを組み合わせるHPV/パップ同時検査 です。米国予防サービス作業部会(USPSTF)によれば、30歳から65歳で、子宮頸がんのリスクが平均的な女性は5年ごとにHPVテストかHPV/パップ同時検査を受ければ十分にスクリーニングができる、とされています。これまでパップテストを導入した全ての国で子宮頸がんの発症率が大きく抑えられています。HPVテストが加わったことでスクリーニングの正確性は更に改善されました。しかし、このアプローチには限界もあります。

例えばHPV検査が陽性で、パップテストでわずかな異常が見られた女性はすぐにコルポスコープ検査を受けるよう勧められます。しかし実際に子宮頸部の前がん、又はがんである異常はほんの一部であり、ほとんどの女性は本来必要のないコルポスコープ検査を受けたことになってしまう、とウェンツェンセン医師は説明します。

このため、「HPV陽性の女性をもっと効果的にトリアージできるマーカーを探すことに多大な努力が注がれています」とウェンツェンセン医師は言います。

ダブル染色法は10年以上研究が重ねられてきたとストーラー医師は言います。p16の発現はHPV感染と密接な関係があり、Ki-67は前がんやがんに見られる急速な細胞分裂を示すバイオマーカーとして利用します。

ダブル染色検査は、HPV陽性の女性のトリアージ法としては「今ある手法の中で最も先進的なものでしょう」とクラーク医師は言います。今回の研究はその更なるエビデンスとして位置付けられると言います。

HPV陽性患者のよりよいトリアージ検査法を求めて

この研究のために、調査チームは2012年1月から5月までの間に、カルフォルニア北部カイザーパーマネンテ病院の定期健診でHPV/パップ同時検査を受け、HPV陽性と判定された30歳以上の女性1,549人を追跡しました。

パップテストの結果が正常又は陰性だった女性には1年後に再び同時検査を受けてもらい、パップテストの結果が異常又は陽性だった女性にはすぐにコルポスコープ検査を受けるよう勧めました。コルポスコープ検査では、正常・軽度前がん病変・重度前がん病変・がんなど病状の進行具合がわかります。

参加者のパップテスト標本には登録時にダブル染色検査を施し、その後5年間の追跡調査をしました。
全体では、研究に参加した女性のうちダブル染色検査で陽性だったのは46%で、パップテストで陽性だったのは51%でした。パップテストの結果が正常だった女性に比べてパップテストで大きな異常が見られた女性の方が、ダブル染色法で陽性が出ている場合が多いことがわかりました。

生体検査の結果も同様でした。5年の研究期間で、重度前がんが見つかった女性の77%、がんが見つかった女性の91%において、ダブル染色検査で陽性判定が出ていました。

研究チームはまた、パップテストの結果よりもダブル染色検査の結果の方が子宮頸部前がんの5年リスクとの相関性がはるかに高かったことをつき止めました。

例えば、ダブル染色検査で陰性だった女性は、パップテストで陰性だった女性よりも5年以内に子宮頸部の前がん病変を発症するリスクが低かったのです。ウェンツェンセン医師によれば、これはダブル染色検査での陰性判定の方が、パップテストの陰性判定よりも5年間で前がん病変を発症しない保証として有効であることを示しています。

逆に、ダブル染色検査で陽性だった女性は、パップテストで陽性だった女性に比べて子宮頸部の前がんを発症するリスクが高かったことがわかりました。ダブル染色法の陽性率の低さと併せて考えると、この研究結果はHPV陽性の女性にダブル染色検査を実施すれば、不要にコルポスコープ検査を受けるケースを減らせる可能性を示唆している、とクラーク医師は言います。

子宮頸部前がん病変を5年以内に発症するリスクに基づいて、研究チームはダブル染色検査で陰性の場合は3年後に再スクリーニングを受ければ十分だと判断しました。

ダブル染色検査がここまでパップテストの感度(すなわち、前がんのリスクが高い女性を特定できる確率)と特異度(リスクが低い女性を特定できる確率)を改善できるのは素晴らしいことだとストーラー医師は言います。

「感度と特異度をともに高める検査を考案するのは非常に難しいのですが、ダブル染色法は検査開発が生物学に裏打ちされているから実現できたのです」と言います。

ダブル染色法についての更なる研究

ダブル染色検査は既にカナダ、ヨーロッパ、オーストラリアなど多くの国で販売・使用されているとストーラー医師は言います。現在、米国での使用に必要な食品医薬品局の認可を受ける前提となる臨床試験を進めているところだそうです。

将来的には、子宮頸がんの一次スクリーニングではHPV検査後にダブル染色検査を行う方法が、HPV/パップ同時検査よりも効果的なやり方として定着するかもしれないとウェンツェンセン医師とクラーク医師は言います。

ダブル染色検査薬のメーカーは、HPV陽性で、ダブル染色検査又はパップテストのいずれかで陽性判定が出た女性における子宮頸部前がんの発症率を分析する研究を現在進めています。また、ウェンツェンセン医師らはHPV陰性の女性も多数含まれる大規模な母集団におけるダブル染色検査の結果を調査しています。

「こうした観察研究を通して現在のやり方を変えるだけのデータが得られると思います」とウェンツェンセン医師は言います。

更にこの検査では、近い将来、他の重要なメリットも得られるかもしれないと研究チームは言います。ウェンツェンセン医師によれば、ダブル染色検査の大きな利点は異常な細胞が染色されるため、検知・定量化しやすくなるということだそうです。

「ダブル染色検査は現在手作業で判定していますが、私たちは今この分析の自動化を試みており、進捗は上々です」と言います。ダブル染色検査の自動化ができれば、信頼性と使いやすさを改善することができるそうです。

原文:October 11, 2018, by NCI Staff
https://www.cancer.gov/news-events/cancer-currents-blog/2018/dual-stain-test-cervical-hpv-positive

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出典元:米国国立がん研究所(NCI)

本記事は情報提供を目的として、当サイトが翻訳したものです。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

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