前回は、喪失体験の後の悲しみの10段階のうち、第2段階の「感情を表現する」段階、第3段階の
「憂鬱(ゆううつ)になり孤独を感じる」段階についてお話しました。今回は、第4段階についてお話
しします。第4段階以降、精神科では「抑うつ状態」や「適応障害」と診断されるような、ご本人にと
ってはつらい段階が続いていきます。

第4段階とは、「悲しみが身体的な症状として表れる」段階です。具体的には、食欲低下、睡眠障
害、腹痛、頭痛、動悸、冷や汗、背中や肩など身体の痛み、口の中の苦み、口渇、便秘、下痢、め
まい、耳鳴り、視界がぼやける、性器の痛みなど、多様な症状がみられます。体の症状ですので、
多くの人は内科や整形外科、耳鼻科、眼科、婦人科などを受診します。ひととおりの診察や検査
をして異常がないと言われても納得できず、複数の病院を受診する人もいます。

ここで、体の疾患による体の症状と、精神障害による体の症状の違いについてご説明します。一
般的には、「体の症状は、痛みの部位や程度が日時によって大きく変化しない」「精神障害による
体の症状は、日時によって部位や程度が変化する」と言われています。

ただし、「まずは体の疾患を疑う」のが原則です。ひととおりの検査を経て異常がない時に初めて
、精神障害による体の症状と診断されます。このような診断の仕方を、除外診断と言います。

今、原因がわからない体の症状で悩んでいらっしゃる人は、まず、内科などの身体科を受診しまし
ょう。そこでの診察や検査ではっきりとした原因がわからないときに、精神科を受診することをおす
すめします。なぜなら、1番初めに精神科を受診しても、上記のような除外診断が原則ですので、
「ほかの病院で体の検査をしてきてください」と言われ二度手間になる恐れがあるからです。

精神科では、安定剤や抗うつ剤などによる薬物療法を行ったり、患者さんのお話を聴いて体の症
状の原因になっているストレス要因をさぐるという精神療法を行ったりします。精神療法の効果が
表れるには時間がかかりますが、薬物療法の効果は早く表れることが多いです。上手にお薬を使
いながら、「がまんできる」、あるいは「生活に大きな支障はない」程度の症状になってから、
ゆっくり自分の悲しみと向き合っていくことをおすすめします。

医師・精神科医
樋野 (ひの)
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