前回からの続き

前回は認知療法のセッションの例を示してみました。そのなかで、「仕事には完全
な状態で臨むべきだ」というクライエントのスキーマが明らかにされていきました
ね。

こうしたスキーマを発見した場合は、それが「適応的」なのかどうかを吟味してい
きます。「仕事には完全な状態で臨むべきだ」というスキーマは「お題目」として
は肯定されるべき目標かもしれません。ただ、現在のクライエントの状況にはどう
やら「適応的でない」ように働いてしまっているようです。

セッションの後半で、セラピストが「必ず」そうしなければならないのか? と問
い返していますが、これはクライエントにスキーマを点検するよう促しているわけ
です。セラピストはこうした働きかけで、クライエントに自分の中に適応的でない
信念(=スキーマ)が存在していることを気づかせ、また、そのスキーマは書き換
えてもよいのだということを暗にほのめかしているのです。

それに対して、クライエントは「確かに…、必ずしもそうとは言えませんね…」と
いうふうに答えています。おそらく、セッションの続きの中で、クライエントは「
完全に仕事に集中できる状況でなくても、仕事をしてよいのだ」ということにも気
づいていくことでしょう。これが、スキーマが書き換わった瞬間です。この時点で
かなりクライエントの心は自由になっているはずです。

それでもまだ違和感が残るようであれば、「仕事には必ずしも全力投球できなくて
もよい」というくらいの新たなスキーマを生成し、これを強く念じて最初のスキー
マと入れ替えてもらうこともできるでしょう。

どちらにせよ、こうした作業を繰り返すことを通して、適応的でないスキーマにク
ライエントが行動を支配されることが無くなっていくわけです。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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