がんの治療中の運動は副作用を軽くする

一昔前まで、がんの治療中の運動は、あまり勧められていませんでした。なぜなら、運動
をすることにより体力を奪い、がん細胞への抵抗力が低下してしまうと考えられていたか
らです。

しかし、最近では複数の研究論文において、運動によりがんに起因するさまざまな自覚症
状や肉体的な機能の顕著な改善がある
こともわかっています。ある論文では、乳がん患者
(ステージⅡ)に有酸素運動を行ってもらったところ、化学療法による副作用(吐き気)
が軽減したと報告されています 1 。

化学療法だけでなく抗がん剤治療中でも、運動によって副作用が軽減することがわかって
います。また、がんの種類に関係なく、全てのがん患者に運動は推奨されます 2 。

いつ、どのくらい運動すればよいのか?
一日30分の運動が目安になります。ただし、心身のコンディションによっては30分の運動
が難しいこともあります。その場合、無理せず自分の体力と相談しながら運動するとよい
でしょう。

一日30分が無理ならば5分でも構いません。また、運動強度も個々の体力に合わせて柔軟
に変化させます。そして、目標は一日30分の運動です。

運動を行うタイミングですが、お勧めは朝起きてすぐの時間帯です。特に朝食前がお勧め
です(まさに『朝飯前』)。その理由は午後だと急な用事が入ってしまったり、疲れてや
る気が失せてしまったりする場合があるからです(「そんなの自分には関係ない」という
鉄の意思をお持ちの方以外は)。朝の決まった時間に運動をすることをルーティン化して
ください。

ポイントは運動の習慣化
人間がある行動を習慣化するために重要な要素には、以下の3つがあります 3 。
1. 知識
2. 技術
3. 意欲

知識を得ることによって、運動ががんの予防にとってなぜ必要なのかということを理解す
ることができます(知識に関しては「がんの予防と運動2」をご参照ください)。

また、技術は実際に身体を動かすことによって体得していくことができます。運動への意
欲は知識によって高まっていきますし、運動を行いその効果を体感することでさらに高ま
っていきます。これらの3つがバランスよく整ったとき、ノーストレスで習慣化が達成さ
れます。

技術については次回(がんの予防と運動4)で具体的な運動の種類とその方法について解
説していく予定です。

参考文献
1. Winningham ML, MacVicar MG. The effect of aerobic exercise on patient reports of
nausea. Oncol Nurs Forum. 1988;15:447-50.
2. Nicole L. S., Jennifer B., Anne S., Winters-Stone M., Judith W., A Systematic Review
of Exercise Systematic Reviews in the Cancer Literature. (2005 – 2017), PM R. 2017
September ; 9(9 Suppl 2): S347–S384.
3. スティーブン・R・コーヴィー。7つの習慣。キングベアー出版。2012年8月28日第1
刷。

スポーツカイロプラクター・医学博士(スポーツ医学)
榊原 直樹

1992年東北大学(動物遺伝育種学専攻)を卒業後渡米。1997年にクリーブランドカイロプラクティックカレッジを卒業後、カリフォルニア州のDoctor of Chiropracticライセンスを取得。2006年にはトリノオリンピックにスポーツドクターとして帯同。2007年に帰国。現在は名古屋にて施術の傍ら講演、執筆、スポーツの世界大会帯同、スポーツ医学の研究などの活動をしている。日本スポーツ徒手医学協会(http://jamsm.org/)代表。元岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師。医学博士。

主な著作:触ってわかる美術解剖学(邦訳、2012)、人体デッサンのための美術解剖学ノート(邦訳、2014)、シェパードの人体ポーズと美術解剖学(邦訳、2017)
主な執筆論文;Influence of lumbopelbic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. Naoki Sakakibara, Sohee Shin, Tsuneo Watanabe, and Toshio Matsuoka; SportLogia, 10(2), 89-95, 2014

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