前回の記事でご紹介したがんに対するケトン食療法。今回はそのケトン食療法の効果が報
告された海外の臨床研究のケースをご紹介します。

■ケトン食療法とは?
ケトン食とは、糖質制限食よりも厳しく糖質をカットし、脂質を積極的に摂取する「低糖
質・高脂質」な食事です。この食事を続けていると、体の中でケトン体というエネルギー
物質が作られるようになり、抗腫瘍効果を発揮することができるため、欧米では新たな食
事療法として取り入れられています。

■ケトン食の腫瘍萎縮効果ははじめ脳腫瘍で発見された
ケトン食の抗腫瘍効果は、アメリカの大学病院での脳腫瘍を持つ2人の小児患者の治療で
初めて発見されました。ケトン食による治療を受けた2人の小児患者は、進行性の悪性星
細胞腫という悪性度の高い脳腫瘍を患っていました。手術や薬物で完治させることはほぼ
不可能で、治療が困難なタイプのがんなのですが、ケトン食を続けることで腫瘍が萎縮し
たのです。さらに2人のうち1人は、腫瘍が縮小しただけでなく、延命効果も確認されま
した。

さらに、イタリアの病院で行われた別の試験で、悪性度の高い多形神経膠芽腫の成人女性
患者に対して、ケトン食療法を取り入れ、著しい治療効果が得られたという論文も発表さ
れました。この患者は腫瘍の摘出手術を受けたものの、完全に切除できず、その後化学療
法と放射線治療を受けたのですが、その際にケトン食を併用することでそれらの治療効果
が増大し、残った腫瘍の萎縮効果が認められました。

これらの結果を皮切りに、その後さまざまな部位のがんに対するケトン食療法の臨床試験
が進められています。

■さまざまながんに対するケトン食の効果
現在、国内外の研究機関では、脳腫瘍だけでなく、さまざまな部位のがんに対してケトン
食の有効性が確認されています。これまでにケトン食の有効性が報告されているのは、前
立腺がん、大腸がん、神経芽細胞腫、膵臓がん、肺がん、乳がん、などです。これらの報
告には、ケトン食療法のみのケース、化学療法や放射線治療等とケトン食療法を併用した
ケースがともに含まれていますが、いずれの症例でも治療効果が確認されています。反対
に、腎がんやメラノーマでは効果が見られませんでした。

この効果の違いは、がん細胞の性質の違いによるものと思われますが、詳しい原因は分か
っていません。今後さらなる研究が期待されます。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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