今回は免疫チェックポイント阻害薬についてご説明します。そもそも免疫機構とは、わたしたちのからだの中でウイルス、細菌、がん細胞などの異物を攻撃し、病気や感染を防ぐ防御器官です。この免疫機構というものは役割分担があり、異物を見つけ、認識するもの、攻撃命令を出すもの、実際に攻撃するものなどにわかれて日々からだの健康を守ってくれています。

ところが、がん細胞は免疫機構の目をくらまして攻撃から逃れたり、働きを弱めて自分を除去できないようにしたりする仕組みを持っていて、これによって生き延び、増殖を続けています。免疫チェックポイント阻害薬とはがん細胞を攻めあぐねている免疫機構に働きかけることによって抗腫瘍効果を発揮します。現在臨床で主に活用されている薬剤は、この免疫機能を再教育してがん細胞かどうかを判断する力を取り戻してもらう作用をもっています。

この薬は非常に新しい薬で、現在のがん治療において話題の中心と言っても過言ではありません。2015年に発売されたニボルマブはこのカテゴリ-に属する薬剤で現在、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、腎細胞がん、古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がんに適応があり、既に大いに臨床活用されていますが、現時点では単剤での投与に留められています。殺細胞性抗がん剤や分子標的薬との併用によって得られる効果は未知数で、現在行われているさまざまな臨床試験の結果が出ることが非常に楽しみなところです。

さらに免疫治療の分野にはまだ研究中のものとして免疫機構の攻撃力そのものを高めるもの、がん細胞を探し出す力を高めるものがあります。これらは強力になった免疫機構が自分自身にも攻撃をしてしまうリスクが高くなるなどの理由もあり臨床適用はまだ難しそうですが、期待されているところです。

現在臨床適応されている免疫チェックポイント阻害薬でも同様に副作用として自己免疫性疾患に類似した肝炎・腸炎・肺炎や1型糖尿病などが報告されています。副作用の発生頻度としては今までの抗がん剤と比較して非常に少ないといえる一方、起きてしまうと少々重篤になりやすいという側面もあります。ただ、生活の質を維持したまま治療するという観点でいうと現時点では非常に期待を持てる薬剤であるといえるでしょう。

報道でもよく取り上げられているようにこのカテゴリ-の薬剤は非常に高価で、毎月100万円を超える薬剤費がかかります。さまざまながん腫、ステージで効果が認められている一方で、その医療費をどうするかについて明確な解答は得られていません。使用の拡大は今後も広がっていくと思われますが、治療を本当に必要としている患者さんがその恩恵を受けることができ続けるよう、いち医療者として願ってやみません。

薬剤師
深井

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