今回から数回にわたって、非常に難しい問題である遺伝性のがんについてお話したい
と思います。がんは種類によってある程度遺伝することが知られていますが、一般的
な認識は必ずしも正しいわけではないように思います。

■がん家系とは?
「がん家系」という言葉もありますが、遺伝性のがんというのはすべてのがんのうち
5%ほどといわれており、決して大きい割合ではありません。がんというものの発症メ
カニズムをすべて説明できるわけではありませんが、ひとつの要因として環境因子が
あると言われています。

たとえば家族に喫煙者が多い、大酒飲みが多いといったことが要因になることもあり
ます。また、同じ食卓を囲み、同じようなサイクルで生活することもあるため、生活
習慣そのものも似てきます。それによりがんに限らず似たような疾患にかかることは
十分ありうるわけです。

ただ、遺伝的な要因の強いがんも存在します。代表的なもので大腸がんの一種である
「リンチ症候群」や「家族性大腸腺腫症」、一部の卵巣がんや乳がんが挙げられま
す。

■なぜ遺伝が関係するのか
人にはもともとがんを抑制する遺伝子が存在します。「がん抑制遺伝子」といわれ、
日々生まれていく分裂エラーを起こした細胞を排除したりすることで、がんの発症を
防いでくれています。

このがん抑制遺伝子に生まれつきの異常がある場合、エラーを起こした細胞をうまく
排除できなくなり、通常よりもがんが発症しやすくなってしまうと考えられています。

この遺伝子は他の遺伝子と同様に、両親から受け継ぎます。父親由来のものと母親由
来のものの2本のDNAでできており、もし両親のどちらかに異常があった場合、これが
子どもにも影響してしまうと言われています。

■非常に扱いが難しい遺伝性のがん
ここまでお読みいただいて、どう思ったでしょうか。私はこの話を最初に聞いたと
き、がんで亡くなった身内を思い出し、自分は大丈夫なのかと非常に不安になりまし
た。そしてさらに、自分は子を持って本当に大丈夫なのかと心配になりました。

遺伝性のがんが難しいところはまさにここだと思います。今の時代、がんで亡くなっ
た身内がいない人はむしろ少ないくらいかもしれません。そのうえでこの話を聞くと、
自分も遺伝的要因があるのではないかと不安を感じてしまうのは当然のことでしょう。

そしてそれは子の問題にもなり、自分だけの問題ではなくなります。配偶者は通常遺
伝子なのに、自分にだけ異常遺伝子があった場合、子に対して強い罪悪感を抱いてし
まうこともあるでしょう。

ですが、まず一度落ち着いていただきたいのは冒頭でお話しした「遺伝性のがんとい
うのはすべてのがんのうち5%にすぎない」ということです。そして、正しい知識と現
時点で取れる対応を知ることで、リスクは抑えることができます。

そしてもし、自分の遺伝子に変異があったとしても、それはあなたのせいではない
し、ましてや親や祖先の誰かの責任でもないということを忘れないでほしいと思いま
す。次回から、それぞれの遺伝性がんについて掘り下げて解説していきます。

薬剤師
深井

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