ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がんになるのを恐れて乳房を切除してしまった
というニュースは記憶に新しいと思います。

なぜ彼女は自分の乳房を切除してしまったのでしょうか?
それは、彼女が「乳がん遺伝子」を持っていることがわかったからです。

もともと乳がんは欧米に多いがんですから、最近アメリカでは乳がん遺伝子の検査がかなり盛
んに行われています。なぜなら、「乳がん遺伝子」を持つ人にはかなりの高率で乳がんや卵巣
がんが発症することがわかったからです。もし検査で乳がん遺伝子が見つかった場合は、「乳
房と卵巣を切除する」か「半年に一度のがん検診を受ける」かの選択をすることになります。そ
れだけ乳がん遺伝子の威力は恐ろしいのです。

ただ、半年に一度のがん検診を受けたとしても、がんの早期発見は可能でも、がんを予防する
ことはできません。したがって、子どもを望まない人の中には、乳房と卵巣を切除してがんを予
防するという選択をする人も出てくるのです。

実はこれはアメリカに限った話ではありません。日本のガイドラインでも同様に、乳がん遺伝子
を持っていることがわかった人は「乳房と卵巣を切除する」か「半年に一回のがん検診を受ける
」かのいずれかを選択することになっています。つまり日本もアメリカも変わらないのです。

ただ、乳がん遺伝子の検査は保険が効かないため高額であることと、検査できる医療機関が
非常に限られているので、乳がん遺伝子の検査は日本ではまだ一般的ではありません。しかし
そのうち、普通に健康診断に含まれるようになればいいと思っています。

ちなみに、実は乳がんと卵巣がんの遺伝子は同じものです。「乳がん遺伝子」は「卵巣がん遺
伝子」でもあるのです。ですからこの遺伝子が見つかったら、乳がんと同時に卵巣がんの予防
も兼ねて乳房と卵巣の両方を切除するのです。

皆さんの中で、血のつながった家族に乳がんか卵巣がんの人がいらっしゃる場合は、特に遺伝
子検査を受ける価値があります。そして、遺伝子検査を受けるなら、早いに越したことはありま
せん。乳房発育があれば小学生でも中学生でもいいのです。なぜなら、遺伝性の乳がんは若
年発症する傾向にあるのと、「遺伝子検査」は一生に一回受ければすむからです。

私のクリニックでも、中学生や高校生が母親と一緒に検査に来ます。そしてもしがん遺伝子が
見つかれば、それからは半年に一回のがん検診をきちんと受けることで、大切な乳房や命を失
うことを防ぐことができるのです。

医師・産婦人科医 MPH
野嶋 優(のじま ゆう)

専門分野は不妊症・ピル・避妊・性感染症・子宮内膜症・LGBT・女性のメンタルヘルス・若年女性のがん(乳がん・子宮がん等)等。不妊症や各分野の臨床とともに、長年にわたって「若年女性のがん」(とくに遺伝・生活習慣と乳がん、HPV感染と子宮頸がん、若年女性のがん検診)の啓蒙活動に関わってきたので、その経験を生かしていろいろな切り口からご提供していきます。
ピル・性感染症・インフルエンザワクチン等に関する公的研究実績あり。2女の父。

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