前回からの続き

認知療法についてここまでかなり詳細に見てきました。例示した方法はカウンセラ
ーとのやり取りの場面でしたが、練習して熟達すれば自分で自分の心を点検するこ
ともできるようにもなることでしょう。

こうしたがんに対する認知行動療法的アプローチが、リラクセーションや心理教育
と組み合わされて、ひとつのパッケージとしてマニュアル化される動きもあります
。最近では,ハーバード大学のGreer JA らが,がんに対するコーピングを高めるア
プローチを組み合わせた介入法を提案しています。参考として以下にそのメニュー
の抜粋を示してみます。

Ⅰ.心理教育と目標設定(約1セッション)
・進行がんという文脈における不安についての認知・行動モデルを示す
・治療目標を確立する

Ⅱ.リラクセーション・トレーニング(約1セッション)
・不安,生理的なストレス反応,がん関連症状や治療の副作用,の関連性について
話し合う
・呼吸訓練
・自律訓練法

Ⅲ.がんの恐怖へのコーピング(約3セッション)
・進行がんに関連する自動思考を同定する
・現実的な心配と非現実的な心配を区別する証拠を検証する
・信頼できる情報源から追加情報を集める(必要に応じて)
・認知のかたよりに対して,認知再構成法を行う
・現実的な心配に対しては,問題解決技法,または,受容と適応を促す技法を適用する

Ⅳ.活動計画とペース配分(約1セッション)
・日常生活活動を評価し,優先順位をつける
・体調によって日を分類する
・活動計画とペース配分を,課題に応じてではなく,時間に応じて行う

(参考)
Greer JA, Park ER, Prigerson HG, et al:Tailoring Cognitive-Behavioral
Therapy to Treat Anxiety Comorbid with Advanced Cancer. J Cogn Psychother
24(4):294 – 313 , 2010 より

まさしく、がんの不安と真正面から向き合う内容も多く含まれており、強い自我を
重んじる欧米的な取り組みといえるかもしれません。しかし、いずれ日本において
もこうしたパッケージとしての心理療法が、がんサバイバーの方々に対して積極的
に用いられる日が来るでしょう。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

この執筆者の記事一覧

がんと診断されたあなたへ

PAGE TOP