体脂肪を減らす、筋力をつけ基礎代謝を上げる、心肺機能を向上させる…運動にはさまざま
な健康上のメリットがあります。これら一般的にイメージされるメリット以外に、実は「運動をす
ることでがんによる死亡の危険性を低下させる可能性がある」ということをご存知でしょうか?
がんが死亡率の一位である日本で生きる私たちにとって長生きする可能性を高めるためにも
う少し詳しく見ていきましょう。

■頻繁に運動する習慣はがん死亡率低減につながる!
さまざまな大規模調査から、運動の頻度とがん死亡率の関連性が示されています。

たとえば、一日の歩行距離とがん死亡率の因果関係を調べた研究があります(※1)。この調
査は1965年から始まり、ハワイに住む日系人約8000人を対象に12年間の追跡調査を行いま
した。その結果、一日に0~1マイル歩く人と、2~8マイル歩く人とを比較すると、前者は後者
よりがん死亡率が2.5倍も高いことがわかったのです。

もう一つは、最大酸素摂取量とがん死亡率の関係です。最大酸素摂取量は有酸素運動の実
施状況と相関があると考えられているため、運動習慣と関連の深い指標として有用であると
考えられています。具体的には日本人男性約9000人を16年間追跡調査した研究があり
(※2)、その人たちについて最大酸素摂取量の高低により5つの群に分類し、がんで死亡した
比率との相関を調べました。その結果、最大酸素摂取量が高い群に所属する人ほど、がんで
の死亡率が低いということがわかりました。

もちろんこれらの調査においては、喫煙・飲酒の習慣やBMI値など、ほかに健康に関連のあ
る指標の影響に関しては統計的に調整されています。総じて、運動習慣とがん死亡率には関
連がある可能性が濃厚です。

■生命化学的メカニズムの仮設
上記のような関係のメカニズムについては不明瞭な点が多いのですが、生命科学的には運
動によりがんが抑制されることには妥当性が多くあります。

まず、運動は免疫力を高め、それによりがん細胞を攻撃してがんの進行を抑えるという可能
性が考えられます。次に、がんの原因として活性酸素(細胞を傷つける反応性の高い酸素原
子を含む分子種)があげられますが、習慣的に運動をすると活性酸素を無毒化する体内の機
構が活性化し、それによりがんを抑制するという可能性もあります。さらには、インスリンやテ
ストステロンなどのホルモンは、過剰量になると、後にがん細胞となるがん前駆細胞を増殖さ
せる効果をもつのですが、これらのホルモンの過剰分泌が運動により制御されることでがん
を食い止めるという可能性もあります。

運動はがんを防ぐという、意外なメリットがあることがわかると、これから運動することが楽し
みになってきませんか?運動習慣がない人も、これを機会に運動をはじめてみましょう!

※1
Hakim AA, Petrovitch H, Burchfiel CM, et al. Effect of walking on mortality among
nonsmoking retired men. N Engl Jmed 338: 94-99,1998.
2
Sawada SS, Muto T, Tanaka H, et al. Cardiorespiratory fitness and cancer mortality in
Japanese men: a prospective study. Med Sci Sports Exere 35: 1546-1550, 2003.

医療者編集部
スポーツ医学と運動科学ラボ

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