前回は、喪失体験の後の悲しみの第4段階についてお話ししました。
今回は、第5段階と第6段階についてお話ししたいと思います。

第5段階とは、「パニックに陥る」段階です。頭の中が混乱し、喪失体験以外のことを考え
られない状態です。家事や趣味などをしても、そのことばかりを考えて目の前のことに集中
できない、あるいは集中できたとしてもごく短時間で、またそのことを考え始めます。

皆さん、頭ではわかっているはず。「このままではだめだ」「考えたからといって、失った
ものが戻ってくるわけではない」「何とか気をそらさなければ」と。ところが、それができ
ません。頭と心は別なのです。これは、人間として一般的な、だれにでも起こりうる反応です。

パニックに陥ったら、「この状態は仕方ないことなのだ」「ずっと続くわけではないのだ」と
自分に言いきかせ、誰かに助けを求めるのが良いと思います。家族や友人に話をきいてもらっ
ても良いですし、精神科を受診して話をきいてもらったり薬を処方してもらったりしても良い
と思います。

第6段階とは、「喪失に罪責感を抱く」段階です。一般的に、身近な方が大変な思いをし
たり自殺したりしたとき、人間は罪責感・自責感をいだくといわれています。大災害が起
こった時に被害者の人々をTVで観て、「普通の生活をできていることが申し訳ないように
感じた」という経験はないでしょうか…?

私の外来にいらっしゃった、ある50代の男性患者さんは、「同じ部署に所属する4人のう
ち、自分以外の3人が立て続けに大変な目にあった」「一人はがん、一人は膠原(こうげ
ん)病、一人は離婚を経験した」といいます。その後から「元気に仕事ができていること
が申し訳なく感じた」といい、頭痛や胃痛が起きるようになったため、精神科を受診した
と言います。

ここでは、まず、「正常な罪責感」と「病気としての罪責感」をわけておいた方がよいで
しょう。「正常な罪責感」とは、私たちの社会基準で考えて気がとがめるようなことをし
たり、逆になすべきことをしなかったりしたときに生じるものです。例えば、自分のミス
で交通事故を起こしてしまったり、友人との約束を忘れてまちぼうけをさせたりしたとき
です。このようなときは、罪責感を感じて当たり前です。

次回は、「病気としての罪責感」についてお話ししたいと思います。

医師・精神科医
樋野 (ひの)
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