■がん家系とは?
さて、今回は前回に引き続き遺伝性がんについてお話ししようと思います。特に今回は遺伝
性乳がん、卵巣がんについて掘り下げてみましょう。

■BRCA遺伝子
遺伝性乳がんは、乳がん患者全体の7~10%程度といわれており、BRCA1/2遺伝子という遺
伝子が原因遺伝子の50%を占めると報告されています。このうち、BRCA1変異を持っていると
、分子標的薬やホルモン剤が効かないとされるトリプルネガティブ乳がんといわれるタイプの
乳がんに多く、BRCA2変異を持っているとホルモン療法が効くLuminalタイプ乳がんと呼ばれ
るタイプが多く発症する傾向があります。

また、このBRCA遺伝子は卵巣がんにも影響すると言われており、遺伝的素因によって発症
する乳がん、卵巣がんのことを「HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)」と呼んだりもします。

このBRCA遺伝子は、前回お話ししたように2本のDNAから成るため、親が変異を有している
場合、性別に関係なく親から子へ50%の確率で受け継がれます。そして、このBRCA遺伝子の
変異を有していると乳がん、卵巣がん、前立腺がんへのり患リスクは大きく上昇してしまうこと
がわかっています。

■HBOCの特徴
HBOCには以下のような特徴があります。
「若年で乳がんを発症する」
「トリプルネガティブ乳がんが多い」
「両側の乳房にがんが発症する」
「片側の乳房に複数回がんが発症する」
「乳がんと卵巣がんを併発する」
「男性乳がん」
「家系に乳がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がんになった人がいる」
思い当たる点がある人は検査を受けてみてもよいかもしれません。

■アンジェリーナ・ジョリーの選択
2013年5月14日に米国の女優であるアンジェリーナ・ジョリーが自身はBRCA1遺伝子に変異
があることを公表しました。彼女の母親は乳がんと卵巣がんを併発し56歳で亡くなっています
。また、祖母は45歳、叔母は61歳に卵巣がんで亡くなっています。アンジェリーナ・ジョリーは
37歳で、予防的な両側乳腺切除を行ったということです。

これは「アンジェリーナ効果」といわれ、BRCA遺伝子検査を受ける女性の増加をもたらしまし
た。HBOCで発症する乳がんに対しては、残存乳房内への再発を考慮した手術法や、卵巣が
んに対しては抗がん剤の感受性を考慮した治療選択など、HBOCであることによる適切な治
療選択も可能になります。本人も言っていることですが、HBOCにとって予防的外科手術が必
ずしも全員にとって最良の選択になるとは限りません。ですが、大切なのは自身の状況を知
り、選択肢を知り、そのなかで納得のいく選択を自分でしていくことではないでしょうか。

薬剤師
深井

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