「糖尿病とがんは関係ない」と考えている人は多いと思いますが、実はがんと糖尿病には深
い関わりがあり、糖尿病医ががん患者と関わる機会も多くあります。これから数回のシリ
ーズで、両者の関係についてお話をさせていただきます。

■糖尿病とがんリスク
2016年の推計では約2000万人が糖尿病とその予備群とされ(うち糖尿病は1000万人)、
日本人の6人に1人の割合です。一方、日本人の2人に1人ががんになるとも言われています
。両方とも疾患頻度が高いため、両方を同時に抱える患者の数は多いのです。

糖尿病外来で診療しておりますと、その中で数人はがんを抱えておられ、また糖尿病外来
に通院するなかで、がんを糖尿病医が発見するということも年に数回はあります。

これは、糖尿病外来の患者数が多く、がんが国民病で頻度が高いということもあるのです
が、実は糖尿病にり患しているとがんのリスクが上昇すると言われています。

糖尿病とがんの関係を検討するために、日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で委員会を設
立し、2013年7月に報告を発表しました。これによれば糖尿病がある人は、ない人に比べ
、がんになる確率は1・2倍に増加すると言われています。種類別でいうと、大腸がんにな
るリスクは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、膵がんは1.85倍も高いことがわかりました。

■糖尿病でがんリスクが上昇する理由

1)生活習慣
がんと関連があるのは主に生活習慣が関与する2型糖尿病ですので、2型糖尿病の場合に
ついてお話しします。加齢、肥満、運動不足、不適切な食事(赤肉、加工肉の摂取過剰、
野菜・果物・食物繊維の摂取不足)、過剰飲酒、喫煙は、2型糖尿病とがんに共通の危険
因子です。両者の共通危険因子となる生活習慣を続けることで2つの病気を発症するリス
クが高まると言われています。

2)高血糖
高血糖による酸化ストレスが発がんに関係する可能性が言われています。

3)慢性炎症
糖尿病では体内に慢性的な炎症の存在し、慢性炎症は発がんのリスクと考えられています。

4)高インスリン血症
高血糖が続くと糖を筋肉や脂肪に取り込むインスリンの働きが悪くなり、これをインスリ
ン抵抗性と呼びます。インスリンの効きが悪いため、これを補うために膵臓が過量のイン
スリンを分泌します。しかしそれでも高血糖を是正することができない悪循環の状態が糖
尿病です。

インスリンは細胞を成長・増殖させるホルモンなので、過剰なインスリンが発がんに関与
する可能性があると考えられています。ただし、インスリン注射により発がん性が増える
ことは否定されています。

医師・内科認定医 日本糖尿病学会所属
鈴木 亜希子

2010年に国立大学医学部卒業。その後、総合病院、大学病院、クリニックなど様々な規模の医療施設で臨床経験を積む。主な専門は糖尿病・内分泌領域。

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