普通の乳がん検診では見つからない乳がんがある⁉
と聞いて、驚く人もいると思いますが、これは残念ながらそのとおりです。

普通の乳がん検診では、触診・超音波検査(乳腺エコー)・マンモグラフィーの3つを組み合わ
せて行うのが一般的です。集団検診(地域検診や職場検診)の場合は、ときに超音波検査かマ
ンモグラフィーのいずれか一方だけだったり、触診が省かれたりすることもあります。ところがこ
れら3つの検査のすべてを行っても早期に発見することがほぼ不可能な乳がんがあるのです。
それは「炎症性乳がん」といわれる非常に悪性度の高いタイプの乳がんです。

乳がんにはいくつかの種類があり、そのなかでも炎症性乳がんは比較的まれながんですが、
若い人に多く非常にたちの悪い乳がんです。米つぶより小さな病変が、あっという間に乳房全
体に広がり、早いうちにいろんな臓器に転移して命を奪います。全く無症状だった人が、数週間
から数カ月で激しい症状に進展します。炎症性乳がんは、乳がんの中でもめずらしく比較的早
い時期から激しい痛みや熱感、むくみや腫れ、変色など、乳房の強い症状を伴いますが、これ
らの自覚症状に気づいたときには、残念ながらほとんどの場合、手遅れです。

炎症性乳がんは50代以上に多いといわれていましたが、最近では若い女性に増えており、米
国ではすでに若年者に多い乳がんと定義されています。また炎症性乳がんは、白人より有色
人種に多い乳がんであることも特徴です。このように非常に悪性度の高い炎症性乳がんは、触
診・超音波・マンモグラフィーのいずれでも早期発見は不可能です。

現在、炎症性乳がんを早期に発見できる可能性があるのはサーモグラフィー検査だけです。赤
外線の輻射を高精度で測定できる特殊なカメラ(サーモカメラ)を用いて、乳房表面の温度の違
いを0.1度以下の精度で検出します。炎症性乳がんはまず乳房の皮膚に発生し、その場所は周
囲よりごくわずか高温になっているので、そこを探すのです。

しかしながら、残念なことにサーモグラフィー検査を行っている施設も多くはありません。サーモ
グラフィー検査は直接乳房に触れることはないので痛みは全くありません。

今回は、乳がん検診ですべての乳がんがわかるわけではないこと、危険な炎症性乳がんが若
年者に増えていること、それはサーモグラフィー検査でしか見つからないことを頭に入れて、機
会があればぜひサーモグラフィー検査も受けていただきたいと思います。

医師・産婦人科医 MPH
野嶋 優(のじま ゆう)

専門分野は不妊症・ピル・避妊・性感染症・子宮内膜症・LGBT・女性のメンタルヘルス・若年女性のがん(乳がん・子宮がん等)等。不妊症や各分野の臨床とともに、長年にわたって「若年女性のがん」(とくに遺伝・生活習慣と乳がん、HPV感染と子宮頸がん、若年女性のがん検診)の啓蒙活動に関わってきたので、その経験を生かしていろいろな切り口からご提供していきます。
ピル・性感染症・インフルエンザワクチン等に関する公的研究実績あり。2女の父。

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