がんは日本人の2人に1人が発症するといわれているため、ひとごとではありません。自分が
がんと診断されたら、多くの人は治るためにできることは何でもしたいと思うのではないでしょ
うか。世の中には、がんの標準治療以外に補完代替療法(民間療法)があふれています。今
回は標準治療と補完代替療法の違いについてわかりやすくまとめます。

■がんに対する標準治療
現在、がんに対して効果が認められている標準治療は、手術、薬剤による化学療法、放射線
療法になります。医学的に標準治療とされるには、多くの研究や試験成績をもとに効果の有
無を判定される必要があります。

わかりやすく説明すると、例えば細胞や動物を対象に研究を行い、ある薬剤ががんに対して
効果があるかどうかを検証します。細胞や動物に対して効果があっても、人間にとって同様
の効果が得られるかはわかりません。そのため、副作用などを慎重に検証し、実際に少人数
のがん患者に対して使用してみて効果があるかどうかみてみます。一定の効果があるようで
あれば、より人数を増やしてがん患者に使用し、効果が確かにあるかどうか検証します。

試験結果の検証には、がん治療に詳しい多くの医師などが参加し、意見を交わします。そし
て最終的に国の承認を得られると世の中に出てきます。薬剤の種類や治療法によって多少
違うこともありますが、多くの標準治療はこのような工程で実際に実施できるようになります。

もしかしたら、エビデンスという言葉を聞いたことがあるかもしれません。医学におけるエビデ
ンスとは、治療として有効かどうか判断するための科学的根拠のことで、今までの研究や試
験成績などを指します。「エビデンスがある」、とは「治療として一定の効果がある」とほぼ同じ
意味になります。

■がんに対する補完代替療法
一方で標準治療を補ったり、標準治療の代わりに行う治療法のことを補完代替療法とよびま
す。民間療法とよばれることもあります。健康食品やサプリメント、マッサージ療法、運動療法
、心理療法など多くのものが含まれます。

がんと診断され、標準治療をしていても治るかどうか不安であったり、標準治療では限界だと
担当医から話があったり、がんが再発または転移したりと、がん患者とその家族は常にがん
の恐怖と闘っていると言っても過言ではありません。そのような精神状態の時に、「がんに効
く」とうたうような食べ物や飲み物、サプリメントなどを見つけたら藁をもすがる思いで摂取した
くなるのはよく理解できます。ただ、気をつけなくてはいけないのはほとんどの補完代替療法
には現時点で十分なエビデンスがないことです。広告のために、がんに効いたり、治ったりし
たような経験談などを提示したり、具体的な治療成績を載せているものもありますが信用でき
るかどうか疑問です。

補完代替療法を完全否定するわけではなく、摂取することで気持ちが安らぐのであれば、そ
れもよいかもしれません。しかし、国立がん研究センターのサイトにあるように補完代替療法
において、がんの進行が抑えられると医学的に確かめられているものは一つもありません。
また、一部の補完代替療法の中には安全でないものも含まれており、時に標準治療の薬剤
の効果を妨害してしまう可能性もあると考えられています。

なかには、高額な費用を請求されることもありますので、本当にすべきかどうかよく考えるよう
にしましょう。もし補完代替療法を試したい時には、担当医によく相談するようにしてみてくだ
さい。

■統合医療という考え方
補完代替療法は、単独でがんの進行を抑制すると確かめられているものは現時点ではあり
ません。ただし、標準治療の副作用やがんの恐怖を緩和するために併用するとよいと考えら
れているものもあります。

例えば、がんの痛みに対するマッサージ療法、がんの不安に対するアロマテラピー、末期が
ん患者に対する音楽療法や心理療法などが挙げられます。

このように、従来の標準治療に補完代替療法や伝統医学などを組み合わせて行う治療法を
統合医療とよびます。厚生労働省は、統合医療を「西洋医学いわゆる標準治療を前提として
、これに補完代替療法や伝統医学などを組み合わせて患者の生活の質を向上させる医療」
と定義しています。

がんは誰にとってもつらく、悲しい病気であることは確かです。その気持ちを利用するような広
告をうたう商品や治療法をすぐに信じるのではなく、まず担当医に相談してほしいと考えます
。ご自身の体に負担がなさそうで、治療を進める上でも有害でないものであれば組み合わせ
てもよいと言われるかもしれません。

医師・医学博士 総合内科専門医/腎臓内科専門医/透析専門医
大塚 真紀

都内の大学病院に所属し一般内科や腎臓内科外来、透析管理などをしていたが、夫の仕事のため現在はアメリカ在住。現在は育児をしながら、在宅で医療記事の執筆や監修、医学論文の翻訳などをしている。信頼性の高い情報を選び、わかりやすく読者のためになる記事の作成を心がけている。今まで執筆・監修で携わってきた記事は500記事以上。

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