前回のコラムでは、喫煙が運動をする際の心臓や肺に及ぼす悪影響についてまとめました。
体に取り込む酸素が少なくなり、加えてその少ない酸素を効率的に利用することもできなくな
ってしまいます。喫煙は、アスリートをさらに過酷な状況へと陥れる足かせ以外の何物でもあ
りません。心肺機能への悪影響は、運動時の全身持久性能力低下へとつながります。では、
一方でパフォーマンスを生み出す筋肉への影響はどうなのでしょうか。

■筋肉への影響
若年喫煙者9人と非喫煙者9人を対象として、運動時の筋肉で酸素量や血流量がどのように
変動しているかを調査した研究があります。こちらの研究では、近赤外線分光法(near –
infrared spectroscopy : NIRS)を用いて運動中の骨格筋の酸素動態を測定し、活動筋への酸
素供給能を評価しています。2種類の運動負荷(高速・低速)で膝の曲げ伸ばしを行った際の
、大腿外側の筋肉が測定の対象とされています。

結果としては、低速の運動において、喫煙者の活動筋内の血流量・酸素を多く含む血流量が
、非喫煙者のものよりも少なかったと示されています。これにより、喫煙者は筋肉の酸素需要
に対して、供給が間に合っていないということが考えられます。これは、喫煙により血管拡張
機能が低下し筋肉内の圧力が高まることで、血流の阻害が引き起こされたことが原因である
とされています。

このような研究では、被験者・運動様式・測定対象(被験筋)などの測定条件により、上記の
ような結果が得られないかもしれません。しかし、少なくともスポーツ中の筋では、血流阻害
による酸素不足が起こる可能性があるということが考えられます。

膝の曲げ伸ばしのように、多くの酸素を必要としない運動でさえも、筋肉内では酸素が足りて
いない状況に陥るということです。筋肉内の酸素が不足してしまうと、うまくエネルギーを供給
できなくなります。その結果、パフォーマンスの低下(身体運動を生み出すことができない)に
つながるのです。

筋内で酸素不足・酸素を取り込めない・取り込んだ酸素を効率的に利用できない、といった喫
煙の悪循環の構図が出来上がってきました。アスリートが喫煙することのデメリットについて、
理解が深まってくださると幸いです。

Jリーグクラブ・アスレティックトレーナー / 修士(体育学)
下田 源

大学院にて体育学(スポーツ医学)の修士号を取得後、同大学研究員等を経て、
Jリーグクラブのアスレティックトレーナーに就任。
アカデミーからトップチームのトレーナーを歴任し、幅広い年代の選手に対するコンディショニング・フィットネス・リハビリテーションを担当。
また、アスリートだけではなく、一般の方を対象としたトレーニング・フィットネス・コンディショニング指導も実施中。
資格
:日本体育協会アスレティックトレーナー
、NSCA公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
、高等学校教諭(保健体育)


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