今回は糖尿病の人ががんになると、糖尿病の状態にどのような変化が起こるのかお話しさ
せていただきます。

■がんになると糖尿病が悪化する
糖尿病の人ががんにり患すると、前回説明したインスリン抵抗性が増加します。インスリ
ン抵抗性とは、血中にインスリンが存在するにも関わらず、インスリンの作用が十分に発
現できない状態ですので、インスリンが効きにくくなるということです。後でお話ししま
すが、これががんの発見の契機になることも多くあります。

また、膵がんになられた人は、インスリン抵抗性が増大するだけではなく、インスリンそ
のものが分泌できなくなってしまいます。血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリ
ンは膵臓から分泌されますが、その膵臓に腫瘍ができて正常な組織が少なくなるとインス
リンの分泌量自体が減ってしまうことで糖尿病が悪化します。

これまでお薬は使わず食事・運動療法のみで良好な結果を得ていた患者にお薬が必要にな
る、お薬だけで良好な結果を得ていた人がインスリン注射が必要になる、ということも多
くあります。

■糖尿病が理由もなく急に悪化した時はがんも疑う
糖尿病の人ががんにり患すると、既に述べたように糖尿病が悪化することが多くあります
。そうなると、お薬もきちんと飲んでいて、食事や運動に気を付けていても糖尿病の状態
が悪化してしまいます。そのため、生活は何も変わっていないのに急に糖尿病が悪化した
患者がいた場合、がんの検査を行います。

これは余談になりますが、こちらが深刻な顔で、「生活習慣は何も変わってないのに急に
数値が悪化するなんて変ですね。がんの可能性があるので検査をしましょう。」と言うと
、急に慌てて「ごめんなさい、嘘をつきました。薬もたくさん飲み忘れたし、運動もさぼ
ったし、間食も増えました。悪くなったのはそれらのせいです。生活習慣が変わっていな
いというのは嘘です。がんの検査は必要ありません。」と本当の事を話してくださる患者
さんは、多くいらっしゃいます。こういった、人間同士の生きたやりとりもまた、糖尿病
診療の醍醐味のひとつです。

■糖尿病の人はがん検診を
40歳を過ぎるとがん検診を受ける事が望ましいと言われています。自治体の助成やクーポ
ンもあります。血糖値に反映されず気が付かれないまま進行してしまうこともあります。
糖尿病の人はぜひ定期的にがん検診を受けるようにしていただきたいです。

医師・内科認定医 日本糖尿病学会所属
鈴木 亜希子

2010年に国立大学医学部卒業。その後、総合病院、大学病院、クリニックなど様々な規模の医療施設で臨床経験を積む。主な専門は糖尿病・内分泌領域。

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