がんと慢性炎症には深い関わりがあります。肝硬変は肝臓がんに移行する可能性が高いこ
とやピロリ菌が胃がんリスクを高めることなどは、その具体的な例です。本シリーズでは、慢
性炎症の原因、そしてそれががんを引き起こすメカニズム、さらに慢性炎症を予防(または改
善)するための方法についてお話していきたいと思っています。

■炎症とは?
炎症は人間が元来備えている本能的(原始的)な反応です。つまり、健康な人ならば持ち合
わせている防御反応です。炎症反応のお陰で、私たちの体はウイルスやバクテリアなどの外
敵から守られています。また、損傷した細胞や化学物質を排除してくれています。

従って、炎症反応によって生成される炎症物質は怪我や外敵によるダメージから体を守り、
損傷部位を修復する役割を持っています。従って、炎症は私たちが生きていく上で、必要な反
応なのです。

今まで説明してきたように、炎症反応は非常に重要な体の自己防衛反応なのですが、マイナ
ス面も持っています。それは、炎症によってがん細胞の増殖が促されてしまうことです。

炎症には発症のメカニズムによって、急性炎症と慢性炎症に分けられます。それでは、それ
ぞれの炎症について見ていきましょう。

■急性炎症とは?
外傷(打撲、捻挫)によって組織が損傷したり、外敵(ウイルス、バクテリアなど)の侵入がある
と、それに反応して細胞から炎症物質が分泌されます。このタイプの炎症が慢性化すること
は、ほとんどありません。従って、長くても数日から数週間で収まっていきます。また、急性炎
症はがんのリスクを高めることはありません。

■慢性炎症とは1?
一方、慢性炎症は、怪我などに起因する炎症とは異なり、いろいろな要因によって体内で生じ
る細胞レベルの炎症のことです。その名が示すように慢性的・持続的な炎症です。上記で説
明した炎症と比べると、炎症の持続期間がはるかに長くなる点で趣が異なります。がんとの
関連性が強いのは、こちらの炎症になります。

慢性炎症はさまざまながんの原因になることがわかっています(1. Philip M, 2012,
http://bit.ly/2Aac0Z6)。また、がん細胞によって炎症反応が促されるため、それがさらにが
ん細胞の増殖を引き起こすこともわかっています(2. Balkwill FR, 2012,
http://bit.ly/2yCIqcJ)。従って、がんの予防にとって慢性炎症の改善は大変重要なポイントとなります。

次回は慢性炎症についてより詳しく見ていきたいと思います。「慢性炎症の原因」や「炎症性
疾患とそれに関連性の強いがんの種類」、さらに「がんが炎症を利用して増殖していくメカニ
ズム」について解説していきます。

スポーツカイロプラクター・医学博士(スポーツ医学)
榊原 直樹

1992年東北大学(動物遺伝育種学専攻)を卒業後渡米。1997年にクリーブランドカイロプラクティックカレッジを卒業後、カリフォルニア州のDoctor of Chiropracticライセンスを取得。2006年にはトリノオリンピックにスポーツドクターとして帯同。2007年に帰国。現在は名古屋にて施術の傍ら講演、執筆、スポーツの世界大会帯同、スポーツ医学の研究などの活動をしている。日本スポーツ徒手医学協会(http://jamsm.org/)代表。元岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師。医学博士。

主な著作:触ってわかる美術解剖学(邦訳、2012)、人体デッサンのための美術解剖学ノート(邦訳、2014)、シェパードの人体ポーズと美術解剖学(邦訳、2017)
主な執筆論文;Influence of lumbopelbic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. Naoki Sakakibara, Sohee Shin, Tsuneo Watanabe, and Toshio Matsuoka; SportLogia, 10(2), 89-95, 2014

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