前回からの続き

自律訓練法の歴史は古く、1932年、ドイツの精神科医シュルツによって確立さ
れました。しかし、シュルツが何も無いところからこの療法を組み立てたわけでは
なく、同じドイツの大脳生理学者フォクトの先行研究を大いに参考にしたといわれ
ています。

フォクトは催眠実験を繰り返しているうちに、催眠状態に入った人はその後の治療
的暗示を行うか否かにかかわらず、催眠状態に入る前より心身の不調がやわらぎ、
リフレッシュした状態になることに気付いていました。そのため、フォクトは催眠
状態に繰り返し入ること自体が心身の不調解消や体調管理に有効であるとして、頻
回の催眠誘導を実際に治療として用いていました。

シュルツはこのフォクトの知見を背景に、催眠治療者を必要としないクライエント
が自分自身で体調を管理する方法として、自己催眠による心身の管理法を初めて体
系化しました。それがこの自律訓練法なのです。道具も設備も不要の自分で行う方
法ですから、いつでもどこでも体調管理をすることができます。また、自分自身で
実施することができることから、いわゆる自己効力感(≒自信)が高まるという良
さもあります。

筆者があなたにこの自律訓練法を紹介するのは、比較的習得が容易だからでもあり
ます。ほかの心理療法と違い、特別な研修や教師を必要としません。もちろん、専
門家に教えてもらうことで習得はより容易になりますが、基本的には「自律訓練法
に関する本を読んだだけ」で習得できるものなのです。

もし、この自律訓練法を理解し習得するならば、あなたががんと向き合う上で大き
な力のひとつになることを、筆者は保証しておきます。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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