■がん患者では栄養状態が悪化することが多い
がん患者さんは、さまざまな原因によって栄養状態が悪化します。

例えば、消化器(胃や腸、すい臓など)のがんであれば、症状によって食事がじゅうぶんにと
れないことがありますし、消化・吸収の障害が起こることもあります。

また、進行がんの場合、全身の炎症を伴うことがあります。この炎症が持続すると、体のタン
パク質が減り、たとえしっかり食べていても、次第に栄養失調が悪化していきます。

このような術前の栄養状態の悪化は、術後の合併症が発生するリスクを高め、結果的にがん
による死亡率の増加へとつながります。

そこで、まずは自分の栄養状態を評価することが重要です。

■PNI(予後栄養指標)を使って術前の栄養状態を評価する
栄養状態を評価する指標にはさまざまなものがありますが、比較的簡単に計算でき、栄養状
態をよく反映するものが、PNI(予後栄養指標)です。PNIは、以下の式で求められます。

PNI =(10×血清アルブミン値(g/dl))+(0.005×総リンパ球数(/μl))

つまり、PNIは血液中のアルブミンというタンパクの量と、免疫力に関係するリンパ球の数を反
映したもので、栄養状態と免疫力を同時に評価できるすぐれた指標なのです。

例えば、血液検査の結果が以下のとき、血清アルブミン値が4.2g/ g/dlで、総リンパ球数は
8000 × 0.3 = 2400 /μlとなりますので、PNI = (10 × 4.0) + (0.005 × 2400) = 52となります。

ほとんどの病院では、術前にこれらの血液検査を行いますので、血清アルブミン値と白血球
数(および白血球分画)が記載された検査結果を、主治医からコピーしてもらうといいでしょう。

■PNIの値が低い人ほど合併症が増え、予後が悪くなる
一般的に、PNIの正常値(栄養障害のない患者さん)は50~60です。PNIが45以下であれば、
栄養状態が低下していると考えられます。

消化器がんの手術において、消化管の切除および吻合(つなぎなおすこと)が必要な場合
、PNIが45以上であれば「手術可能」、40<PNI<45だと「注意が必要」、またPNIが40以下だと
「切除・吻合は禁忌(きんき:危険なのでしてはいけない)」とされています。
実際に、胃がんや大腸がん患者を対象とした研究において、術前のPNIが低い場合は、術後
の合併症のリスクが増加し、入院期間が延び、さらには生存期間が短くなるという結果が出
ています。

つまり、がんの外科治療がうまくいくかどうかは、術前の栄養状態によって決まるといっても
過言でありません。自分の栄養状態をしっかりと把握し、できるだけの対策を立てることが必
要です。

次回は、術前の栄養状態をいかに改善させるかについてお話しします。

医師・医学博士 消化器外科専門医/がん治療認定医
佐藤 典宏

産業医科大学 第1外科 講師
1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医・指導医の資格を取得。がんに関する基礎研究にも従事し、これまでに発表した論文はおよそ200編(うち130編が英文)。がん患者さんや家族にむけたブログ「あきらめない!がんが自然に治る生き方」。著書に「ガンとわかったら読む本(マキノ出版)」

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