ヒトの脳は、おおよそ1000億個の神経細胞(ニューロン)と、その10倍以上の数のグ
リア細胞で構成されています。ニューロンはたくさんのシナプスを介して緻密なネットワ
ークを構成し、ヒトの意識や記憶、運動や計算といった活動を行っているのに対し、グリ
ア細胞はニューロンを保護し、栄養を運搬するなど、ニューロンの活動を助ける働きをし
ています(最新の研究では、グリア細胞自身も記憶の形成維持に直接関わっていることが
明らかになりつつあります)。

脳腫瘍の一種であるグリオーマは、そのグリア細胞からできる腫瘍です。
グリオーマとは、グリア細胞を由来とする腫瘍の総称で、最新の分類ではおよそ100種
類のグリオーマが存在し、詳細な検査を経て診断名がつけられます。

よく知られているグリオーマとして、毛様細胞性星細胞腫や、びまん性星細胞腫、乏突起
膠種、膠芽腫などがあり、種類と進行度によって悪性度や治療方法が大きく異なります。

グリオーマは、手術で完全摘出ができれば、完治できると言われていますが、手術ができ
る例は多くありません。その理由は、起源となったグリア細胞の特徴が大きく関係してい
ます。

もともと、グリア細胞は数が多い上に、ニューロンに絡みつき、ニューロン同士の隙間を
埋めるように脳の中に敷き詰められている組織です。ですから、腫瘍化してグリオーマに
なった場合も、あたかも脳の広い範囲に染み込んでいくように成長していくので、残らず
に取り切ることが困難なのです。しかも、グリオーマの隙間には、大切なニューロンがい
るので、手術のときに大きく傷つけるわけにもいかず、手術を難しくしています。

先にも述べたように、グリオーマにはさまざまな種類があるので、治療法は一様ではあり
ません。ただし、正常な組織との境目がはっきりしている良性の腫瘍の場合は、手術で治
る可能性があります。それ以外の場合は、グリオーマの種類や発生部位、患者さんの年齢
や体の状態をみながら、放射線治療や薬物療法を行います。画像診断で腫瘍の成長スピー
ドが早くない場合は、すぐに治療することなく経過を観察するケースもあります。

いずれの場合でも、まずはグリオーマがどのような種類なのかを正しく知ることが、適切
な治療選択に必要なので、グリオーマが疑われる場合には専門医を受診してください。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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