がんは、生活習慣、喫煙、飲酒、ストレス、遺伝、ウイルス・細菌感染などさまざまな原
因によって発症しますが、今回はホルモンが関係しているがんについてお話します。

わたしたちの体の機能は、ホルモンの働きによって調整されています。特に、性ステロイ
ドホルモンは、性成熟や生殖機能の維持に欠かせないもので、男性にとっては精巣で作ら
れる男性ホルモンのアンドロゲンが、一方女性にとっては卵巣で作られる女性ホルモンの
エストロゲンが、男性らしさ、女性らしさを決定づける重要な働きをしています。

しかし、これらの性ステロイドホルモンは、健康を維持するのに必要である一方で、がん
の発症・増殖の原因になることがあります。たとえば、男性の前立腺がん、女性の乳がん
、卵巣がん、子宮内膜がんなどは、性ステロイドホルモンが密接に関係し、ホルモン依存
性がんといわれています。

■日本で急増するホルモン依存性がん
近年、ホルモン依存性がんは急激に増加しています。例えば、女性ホルモンのエストロゲ
ンが引きおこす乳がんは、50年前はおおおよそ50人に1人がかかっていたところ、現在で
は12人に1人の割合でり患しています。この乳がんのり患者数の増加の原因は、まだ十分に
解明はされていませんが、初潮の低年齢化や、更年期のホルモン療法などによって、現代
女性の体がより長期間エストロゲンにさらされるようになったことが一つの原因だと考え
られています。また、肥満も乳がんの発症に関係しています。これはエストロゲンが脂肪
から生成されるためで、肥満した女性では標準体型の女性よりもより多くのエストロゲン
にさらされ、乳がんのり患リスクが高まります。

男性でも前立腺がんのり患率が急増しています。前立腺がんは、男性ホルモンであるアン
ドロゲンが原因で発症するがんです。現代人はストレスなどでホルモンバランスが崩れや
すい上に、肥満や食生活の乱れなどの複数の要因が関与することで、ホルモン依存性のが
んにかかりやすくなっていると考えられています。

また、最近の研究により、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんなど性腺に関わ
るがん以外にも、肺がん、大腸がん、胸腺がんなどの発生・増殖にも、ホルモンが関係し
ていることが明らかになっています。

ホルモン依存性がんは、初期であればホルモン療法で改善する可能性があります。早めの
検査・受診を心がけましょう。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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