慢性炎症の原因にはさまざまなものがありますが、今回は特に腸内環境と慢性炎症の関係
について見ていきたいと思います。なぜなら、腸内環境の悪化が慢性炎症を引き越している
ケースが非常に多いからです。

■ずる賢いがん細胞
がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に傷がつく(遺伝子のエラー)ことで発生します。がん細胞
がいったん生じると周囲の酸素や栄養素を吸収して成長していきます。そして、成長に伴い、
その需要量は急増します。急増した需要量を補うために、がん細胞は炎症反応を巧みに利
用します。

がん細胞が大きくなるにつれて遺伝子のエラーもどんどん蓄積していきます。そして、ある段
階になるとがん細胞は化学的シグナルを出し始めます。この化学的シグナルは免疫細胞“マ
クロファージや顆粒脂肪(または顆粒球“)を引き付ける力を持っています。

次の段階において、がん細胞からはサイトカインと呼ばれる炎症物質が分泌されます(つまり
、がん細胞の周りには炎症反応が起こり始めます)。がん細胞の目的は、自ら炎症反応を引
き起こすことにより、体中の血液をかき集めることです。つまり、かき集めた血液に含まれる
酸素や栄養素を取り込んで、さらに成長(増殖)するためなのです。

このように、がん細胞は炎症反応をずる賢く利用することで、栄養素を取り込み、どんどん勢
力を拡大していきます。

がん細胞は、一日に5000個も生成されていることがわかっています。しかし、免疫細胞のお
陰でがん細胞は5000個すべてが駆逐されます。よって、1個でも取りこぼしがあれば、がん細
胞が増殖するリスクは高まります。

もし、体の中で日常的に慢性炎症が起こっていたとしたら、どうなるでしょうか?慢性炎症が、
がん細胞の成長(増殖)を助けることになると思いませんか?
これが、慢性炎症ががん細胞の増殖を促進するメカニズムです。次回は慢性炎症の具体例
である「腸に穴が開いてしまう」疾患について解説していきます。

スポーツカイロプラクター・医学博士(スポーツ医学)
榊原 直樹

1992年東北大学(動物遺伝育種学専攻)を卒業後渡米。1997年にクリーブランドカイロプラクティックカレッジを卒業後、カリフォルニア州のDoctor of Chiropracticライセンスを取得。2006年にはトリノオリンピックにスポーツドクターとして帯同。2007年に帰国。現在は名古屋にて施術の傍ら講演、執筆、スポーツの世界大会帯同、スポーツ医学の研究などの活動をしている。日本スポーツ徒手医学協会(http://jamsm.org/)代表。元岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師。医学博士。

主な著作:触ってわかる美術解剖学(邦訳、2012)、人体デッサンのための美術解剖学ノート(邦訳、2014)、シェパードの人体ポーズと美術解剖学(邦訳、2017)
主な執筆論文;Influence of lumbopelbic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. Naoki Sakakibara, Sohee Shin, Tsuneo Watanabe, and Toshio Matsuoka; SportLogia, 10(2), 89-95, 2014

PAGE TOP