現在、がんによる食欲不振や体重減少に効果のある新薬の開発が進んでいます。新薬では
、これまでの治療とは異なるアプローチで、摂食中枢に直接働きかけることで、食欲不振
などに効果があるとされ、国内での承認が期待されています。

■がん悪液質の食欲不振に対する新薬が登場
進行がんなどで、全身状態が悪くなってくると、食欲不振や倦怠感、体重減少、疲労感な
どを伴う、がん悪液質という状態に陥ることがあります。従来のホルモン製剤では、症状
の改善が困難でしたが、いま新たなアプローチの新薬が、実用化に向けて開発されていま
す。アナモレリンという新薬は、胃で分泌される「空腹ホルモン」と呼ばれているペプチ
ドホルモンである、「グレリン」に似た働きをし、食欲を増進する効果があるとされてい
ます。グレリンは、血流に乗って脳に入り、脳内の摂食中枢に直接働きかけるホルモンで
す。

海外では2014年の臨床試験で、がん悪液質による食欲不振と体重減少に対するアナモレリ
ンの有効性が確認され、国内では2015年に非小細胞肺がん患者を対象に、そして2018年に
は大腸がん、胃がん、膵臓がん患者を対象にした臨床試験によって、その有効性が認めら
れました。アナモレリンは食欲中枢を刺激するだけでなく、下垂体にも作用して、成長ホ
ルモンや成長因子の分泌を促し、筋肉を増加させることもわかりました。

現在、このアナモレリンは実用化に向けて、2018年11月に国内製造販売申請が提出されて
います。

■現在、がんによる食欲不振に使用しているホルモン製剤
国内では、進行したがん患者さんにみられる食欲不振の症状に対しては、ホルモン製剤を
使って食欲を回復させる方法が用いられます。

現在、がんによる食欲不振によく用いられるホルモン製剤としては、プロゲステロン製剤
とコルチコステロイド製剤があります。

プロゲステロン製剤は、体内で女性ホルモンのような働きをする薬剤で、詳しいメカニズ
ムは解明されていませんが、食欲を増進させる効果が知られています。副腎皮質ホルモン
の一種であるコルチコステロイドは、抗炎症効果があるため、さまざまな疾患の治療に用
いられており、食欲を増進させる効果もあります。ただ、どちらのホルモン製剤も、比較
的短時間しか効果が得られず、副作用も出やすいデメリットがあります。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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