がんに対する画期的な食事方法として注目されているケトン食療法の、悪性グリオーマに対する
効果の可能性についてお伝えします。

■ケトン食療法とは?
ケトン食とは、もともと難治性の小児てんかんの治療食です。ケトン食は、糖質制限食よりも厳密
に糖質をカットし、脂質を積極的に摂取する「低糖質・高脂質」な食事です。ケトン食の目的は、血
糖値を抑え、血液中のケトン体の濃度を高めることです。

多くのがん細胞は、糖質をエネルギー源として増殖することが知られており、糖質をほとんど摂取
しないケトン食では、腫瘍が増殖しにくくなると考えられています。ケトン体そのものにも、抗腫瘍
作用および神経保護作用があり、てんかんの他にも、腫瘍や神経疾患などへの治療効果が期待
されています。

■偶然発見されたケトン食のグリオーマへの有効性
悪性グリオーマに対する、ケトン食の有効性が発見されたのは1995年、アメリカの脳腫瘍を持つ2
人の少女に対する治療がきっかけでした。少女たちは星細胞腫という悪性度の高いグリオーマに
侵されており、治療方法がない状況でした。彼女らは、てんかん発作を持っていたため、当初はそ
の発作を抑える目的でケトン食療法を行っていたのです。ケトン食を8週間続ける指導を外来で行
い、その後のPET-CTでグリオーマを確認してみたところ、腫瘍が縮小していることがわかり、延命
効果も得られました。
 
さらに、2010年のイタリアでは、放射線+化学療法とケトン食療法の併用で、多形神経膠芽腫に
対して、腫瘍縮小効果が確認されています。多形神経膠芽腫は、グリオーマの中でも最も悪性度
が高いもので、有効な治療方法がないのが現状ですが、ケトン食の併用で、放射線および化学療
法の効果を増強できたのではないかと考えられています。

その後、動物実験で、脳腫瘍に対してケトン食が腫瘍の増殖を抑制する効果を持つことや、標準
治療との併用で、治療効果が高まることがあらためて確認されています。
 
■各地で広がるケトン食療法の臨床試験
ケトン食療法は、がんの種類やステージを問わず実施でき、標準治療との併用も可能なことから、
今後はさらに普及していくものと思われます。切除が困難なグリオーマをはじめとする脳腫瘍や、
治療選択肢のない進行がんに対しても、ある程度の効果が期待できます。現在国内外の複数の
医療機関で、グリオーマに対するケトン食療法の治験が進められています。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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