前回、「がんの手術前には、栄養状態が悪化する患者さんが多い」というお話しをしました。

手術前に栄養状態が悪化し、とくに筋力や筋肉の量が低下すると合併症が発生するリスクが
高くなり、結果的にがんによる死亡率の増加へとつながります。

そのようなことを防ぐために食事を工夫して、術前の栄養状態をできるだけ維持・改善させる
必要があります。

よくあるのは、「食欲がないから、お茶漬けだけですませる」といった人で、これでは必要な栄
養が足りていません。

まずは主食だけでなく、おかずもバランスよく食べるようにしましょう。そして、とくに筋肉量お
よび筋力を保つために、タンパク質(アミノ酸)をしっかりと摂る必要があります。

腎機能低下などでタンパク制限がなければ、体重1キログラムあたり最低でも1.2グラム(例:
体重50kgの人では60g)、できれば1.5グラム(例:体重50Kgの人では75g)のタンパク質の摂
取を目標にしましょう。

筋肉を保つためのタンパク質を効率よく合成するためには、20種類のアミノ酸がすべて必要
になります。このうち、9種類の必須アミノ酸は体内で合成できないため、食事でしかとること
ができません。

食べ物に含まれている必須アミノ酸(第一制限アミノ酸)の割合を数値化したものをアミノ酸ス
コアとよびますが、数値が高いほどアミノ酸バランスがよく良質のタンパク質といえます。
例として、

・豚肉(ロース)、鶏肉(もも)等
・魚類(あじ、さんま、まぐろの赤身等)
・卵(鶏卵)
・大豆、納豆、油揚げ
・牛乳
・ヨーグルト(100%プレーン)

などがあります。

肉や魚は種類や部位によって異なりますが、多くのタンパク質が含まれています。その他、卵
、牛乳、納豆などにもタンパク質が含まれています。

目標のタンパク質摂取量になるよう、毎回の食事で上記の食品(肉・魚・卵など)を使った料理
を必ず一品は摂取するように心がけましょう。

ただし、食事からのタンパク質摂取には限界があります。また、がんによる消化吸収の障害
がある場合、たとえタンパク質が多く含まれる食品を食べても、あまり吸収されない可能性が
あります。

そこで、効率よく吸収されやすいかたちでタンパク質を摂取する方法として、食事に追加して
ホエイプロテイン(乳清タンパク)で補うことをおすすめします。ホエイプロテインには筋肉の合
成に役立つ分岐鎖アミノ酸(BCAA)が多く含まれ、吸収が速いことから、がん患者さんにも理
想的です。製品によって異なりますが、1回(1杯)で20~30gのタンパク質をとることができま
す。

このような工夫で、できるだけ手術前の栄養状態の改善を図りましょう。

医師・医学博士 消化器外科専門医/がん治療認定医
佐藤 典宏

産業医科大学 第1外科 講師
1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医・指導医の資格を取得。がんに関する基礎研究にも従事し、これまでに発表した論文はおよそ200編(うち130編が英文)。がん患者さんや家族にむけたブログ「あきらめない!がんが自然に治る生き方」。著書に「ガンとわかったら読む本(マキノ出版)」

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