前回はがんが慢性炎症によって増殖していくメカニズムについてお話しました。今回は慢性
炎症の具体的な症状についてです。慢性炎症とはなにかというと腸に穴が開いてしまう症状
です。「腸に穴が開く」と聞くとずいぶんと痛そうですが、目に見えるほどの大きな穴が開く
わけではありません(顕微鏡レベルの小さな穴です)。それでは早速解説していきましょう。

■腸に穴が開く?
リーキーガット症候群という症状を聞いたことがあるでしょうか。英語だと“Leaky gut
syndrome”と書きます。Leakyは、「情報がリーク(Leak)する」などと日本語でも言いますが
、Leakの形容詞で“漏れている”という意味。そして、Gutは内蔵(特に大腸や小腸などの消化
管)という意味です。Syndromeは「症候群」ですから、リーキーガット症候群は、「腸漏れ症候
群」ということになります。

腸から漏れ出すということは、ある程度の大きさの穴が開いていなければなりません。つまり
、リーキーガット症候群では、腸管に微細な穴が開いています。しかし、腸管にはもともと小さ
な穴が開いており、そこから栄養を吸収しています。従って、正確にはもともとあった穴がより
大きくなっている状態です(図1A、B)。


リーキーガット症候群にかかると、今までは通過できなかった大きな塊(分子)が、腸管から漏
れ出るようになります(正確には粘膜に隙間が空き、そこから腸の内容物が漏れ出します(図
2))。すると、体はそれを異物として反応します。つまり、アレルギー反応が起こります。



アレルギー反応の次に起こるのが炎症反応です。従って、リーキーガット症候群にかかると
腸管周辺の細胞から常に炎症物質が分泌されるようになります。これらの炎症物質は毛細血
管を介して全身に拡散されます。

「がんと慢性炎症3」でご説明したように、私たちの体の中では毎日5000個あまりのがん細胞
が生成されています。そして、がん細胞は炎症反応を利用して増殖していきます。従って、が
ん細胞の増殖リスクを抑えるには、慢性炎症が起こらないような生活習慣(食習慣、運動習
慣、睡眠習慣)が大切であることがわかると思います。

次回は腸内環境と密接な関係を持つ腸内フローラのこと。さらに、腸内環境を良好に保つた
めの食事療法についてお話していきたいと思います。

スポーツカイロプラクター・医学博士(スポーツ医学)
榊原 直樹

1992年東北大学(動物遺伝育種学専攻)を卒業後渡米。1997年にクリーブランドカイロプラクティックカレッジを卒業後、カリフォルニア州のDoctor of Chiropracticライセンスを取得。2006年にはトリノオリンピックにスポーツドクターとして帯同。2007年に帰国。現在は名古屋にて施術の傍ら講演、執筆、スポーツの世界大会帯同、スポーツ医学の研究などの活動をしている。日本スポーツ徒手医学協会(http://jamsm.org/)代表。元岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師。医学博士。

主な著作:触ってわかる美術解剖学(邦訳、2012)、人体デッサンのための美術解剖学ノート(邦訳、2014)、シェパードの人体ポーズと美術解剖学(邦訳、2017)
主な執筆論文;Influence of lumbopelbic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. Naoki Sakakibara, Sohee Shin, Tsuneo Watanabe, and Toshio Matsuoka; SportLogia, 10(2), 89-95, 2014

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