■慢性炎症と腸内フローラ

大腸や小腸に慢性炎症が起こると、腸内フローラのバランスが崩れます。また、大腸菌は炎症反応の悪化と共に増殖します。事実、大腸菌は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病の総称)や大腸・直腸がんの患者の大腸により多く分布しています。

従って、腸内フローラのバランスを整えておくことが、慢性炎症の予防にとって大切であり、ひいてはがんの予防にもなります。ちなみに、肥満や喫煙も慢性炎症を引き起こすことがわかっています
(1. Belkina AC, 2012, http://bit.ly/2IVQhHb)。

■腸内フローラとは?

腸内(大腸と小腸)には、約1000兆個もの細菌が生息しています。これは重さにすると1kgから2kgにもなります。
腸内に生息している細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類であり、これらの腸内細菌が種類ごとに分かれて腸壁に張り付いています。ちょうどお花畑(フローラ)のように見えることから、これらの細菌群を腸内フローラと呼んでいます。

善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌の理想的なバランスは2:1:7と言われています。このバランスが崩れ、悪玉菌が増えてくると腸の機能が低下します。

そして、悪玉菌の勢力が強くなると、今まで中立の立場であった日和見菌が悪玉菌に変化し、ますます悪玉菌の数が増えます(日和見菌は腸内環境によって、善玉菌にも悪玉菌にも変化します)。

悪玉菌が優勢のとき、腸内では炎症反応が起こっています。また、腸の内容物の腐敗が進み、便秘や下痢などの原因になります。

■慢性炎症を改善させるカギは食事
ずばり医食同源です。食事に気を付けることで、体内での炎症反応を改善させることができます。例えば、トランス脂肪酸や糖質(特に果糖)は炎症を誘発します。一方、オメガ3、ガンマリノレン酸(GLA)などの脂質は炎症を改善させます。

青魚などに豊富に含まれるオメガ3は炎症を改善させるだけでなく、抗酸化作用も持っていることがわかっています(特に魚の皮には多くのオメガ3が含まれているので、残さず食べるようにしましょう)。

また、ビタミンDも腸内フローラの環境改善にとって大切です。最近のリサーチによると、ビタミンDはクローン病や潰瘍性大腸炎のような、炎症性腸疾患の改善にとっても重要な栄養素であることがわかっています(ビタミンDは紫外線に触れることによっても体内で合成されます)。またビタミンA、C、Eなども同様に強力な抗酸化作用を持っています。

特にビタミンAは細胞の分化・成長にとって非常に重要な栄養素であるため、がん細胞の発生リスクを低減させる可能性があります(2. Okayasu I., 2016, http://bit.ly/2AC5A5a)。

このように食事は慢性炎症の改善にとって、大切な要素の一つです。しかし、食事以外にも大切なことに生活習慣があります(食事も生活習慣のうちの一つ)。次回は生活習慣について見ていきたいと思います。

スポーツカイロプラクター・医学博士(スポーツ医学)
榊原 直樹

1992年東北大学(動物遺伝育種学専攻)を卒業後渡米。1997年にクリーブランドカイロプラクティックカレッジを卒業後、カリフォルニア州のDoctor of Chiropracticライセンスを取得。2006年にはトリノオリンピックにスポーツドクターとして帯同。2007年に帰国。現在は名古屋にて施術の傍ら講演、執筆、スポーツの世界大会帯同、スポーツ医学の研究などの活動をしている。日本スポーツ徒手医学協会(http://jamsm.org/)代表。元岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師。医学博士。

主な著作:触ってわかる美術解剖学(邦訳、2012)、人体デッサンのための美術解剖学ノート(邦訳、2014)、シェパードの人体ポーズと美術解剖学(邦訳、2017)
主な執筆論文;Influence of lumbopelbic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. Naoki Sakakibara, Sohee Shin, Tsuneo Watanabe, and Toshio Matsuoka; SportLogia, 10(2), 89-95, 2014

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