がんに対する新しい治療薬や治療法の研究は、世界中で行われています。現時点で、主な
がんの治療法は手術、放射線療法、抗がん剤による薬物療法となっています。しかし、新し
いがん治療薬「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で、今まで治療の難しかったがんへの効
果も期待できるようになりました。今回は新しいがん治療薬である免疫チェックポイント阻害
薬の特徴や適応、副作用などについてわかりやすくまとめます。

■がんはなぜ体で増えることができるのか?

私たちの体の正常な細胞は、必要以上に増えたりすることはなく、本来の場所から離れてし
まった場合には死んでしまうといわれています。また、体内に異物が入ってきた場合には排
除しようと免疫がはたらくので、本来であれば異物であるがん細胞は増えることができないは
ずです。

しかし、がんはこれらの常識を破り、体内で増え続け、さらに血液やリンパ液の流れにのって
場所を移動し、移動先でも増え続けることができます。がんが体内で増え続けられる理由の
一つに、がんが増え続けるために必要なタンパク質を産生(細胞内で物質をつくること)がで
きるということが挙げられます。血管内皮細胞増殖因子とよばれるタンパク質には、がんに栄
養を運ぶための新しい血管を作るはたらきがあります。がんは新しい血管から酸素と栄養を
もらうことができるようになるので、体内で増え続けられるようになります。

私たちの体は、ウィルスや細菌、アレルゲンなどが体内に入ってくると排除しようと免疫がは
たらきます。がん細胞に対しても同様に免疫がはたらき、樹状細胞(じゅじょうさいぼう)とよば
れる免疫に関わる細胞によって認識されると、T細胞に情報が伝わり、活性化したT細胞がが
ん細胞を攻撃します。しかし、がん細胞の表面に発現しているPD-L1はT細胞に発現している
PD-1に結合するとT細胞の攻撃を抑制することができるので、がんは体内で攻撃されずに増
え続けられるようになります。

■免疫チェックポイント阻害薬の特徴と副作用

私たちの免疫には、もともと過剰に働かないようにするための制御機構があります。その免
疫を抑制するしくみに関わっているのが、T細胞上にあるPD-1やCTLA-4です。また、がん細
胞の表面にもPD-L1というPD-1と結合して免疫を抑制するタンパク質が発現しています。

PD-1、CTLA-4、PD-L1を免疫チェックポイントとよび、これらのはたらきを抑えて免疫のブレ
ーキをはずしてがんへの攻撃を加速させる薬を免疫チェックポイント阻害薬といいます。今ま
での抗がん剤などとは違い、免疫を活性化させてがんを攻撃し治療するので、進行したがん
でも効く可能性があります。また、免疫を活性化するので治療の効果が長く続くことがあると
いうのが特徴です。

しかし、一方で免疫を活性化させるので今までの抗がん剤になかったような副作用が起きる
ことがあるので注意も必要です。免疫が活性化されると、本来は攻撃するべきでない自分の
正常な細胞も攻撃してしまう可能性があり、間質性肺炎や大腸炎、心筋炎などの命に関わる
ような重症な副作用を引き起こすこともあります。

■免疫チェックポイント阻害薬の適応と今後の展望

免疫チェックポイント阻害薬が適応になっている主ながんは、現時点で悪性黒色腫、肺がん、
胃がん、腎がん、頭頸部がん、尿路上皮がん、悪性中皮腫、メルケル細胞がん、ホジキンリ
ンパ腫などですが、今後もさまざまながんに適応が拡大することが予想されています。がんに
対する効果を判断するために臨床研究が行われ、一定の効果があった場合に適応となりま
す。当初は、他に治療法のないような進行したがんが対象でしたが、早い時期のがんに対し
ても使用できる可能性もあります。

また、1つの免疫チェックポイント阻害薬だけでなく、他の免疫チェックポイント阻害薬との併
用や抗がん剤、放射線療法などとの併用によって、より高い効果を得られるのではないかと

期待され、すでに承認が下りているものもあります。ただし、免疫チェックポイント阻害薬も効く
確率は5-30%なので、残念ながら全ての患者さんに有効とはいえません。今後はどのような
患者さんに有効であるか事前に判断できるようなバイオマーカーの開発なども進むのではな
いかと考えられています。

医師・医学博士 総合内科専門医/腎臓内科専門医/透析専門医
大塚 真紀

都内の大学病院に所属し一般内科や腎臓内科外来、透析管理などをしていたが、夫の仕事のため現在はアメリカ在住。現在は育児をしながら、在宅で医療記事の執筆や監修、医学論文の翻訳などをしている。信頼性の高い情報を選び、わかりやすく読者のためになる記事の作成を心がけている。今まで執筆・監修で携わってきた記事は500記事以上。

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