その頃、Aさんに産業保健師から連絡がありました。入院中に見舞いに訪れていた保健師でした。保健師からは治療のことは産業医にもその都度伝え、必要の際には仕事を休むことや仕事の調整について上役に産業医や保健師から連絡すると言われました。Aさんは脱毛のことなど心配なことを保健師に伝えました。保健師からは、「病院からも説明があったかもしれませんが」と確認してから副作用を含め、体調のことは毎日、書いておくように言われました。副作用には波があること、一定の現れ方があるため予測できるものもあること、外来治療してから3日間は仕事を短くしてもらうなど、あらかじめ上役に相談することをすすめられました。Aさんはうまく上役に説明ができるか心配だと伝えると、保健師から上役に説明をすることになりました。長期に渡る治療のため、治療期間の目安のこと、医療機関と産業医が連絡を取り合うことなどを含め上役に説明してもらうことにしました。

そして一番気になっている脱毛については、まずはウィッグに合わせた髪の長さにカットしてはどうかと保健師から言われました。抗がん剤治療を始める前後に短めにカットしておき、ウィッグにしてもあまり変化を感じさせないようにしてはどうかと。また事前に練習して装着できるようにすすめられました。Aさんはあまり髪を短くするのは好みませんでした。しかし、フルウィッグは20万円以上しました。ロングのフルウィッグはさらに数万円上乗せされます。そのため、ロングのフルウィッグではなく、短めのフルウィッグを購入していました。Aさんは髪を切ってウィッグにそろえました。そして事前にウィッグをつけ、アドバイスどおりスーパーなど出かけました。誰にも気付かれなかったようでした。会社の人はさすがに気付くだろうけれど、知らない人からジロジロ見られることはなく、Aさんはホッとしました。

そして治療がすすむと本格に毛が抜けてきて、鏡をみるのが怖くなりました。しかし家族からは、ウィッグが良く似合っていると褒められました。夫からは、「抗がん剤治療が終われば髪は生えてくるとわかっているのだから、今はウィッグの力をかりよう」と言われました。Aさんは最初はウィッグをつけて外出することに抵抗がありましたが、会社の人から何を言われることもなく、堂々と仕事に専念しようと思うようになりました。

また、Aさんの住んでいる地域にはウィッグへの助成金が支給されることを知りました。Aさんは病院で申請に必要な書類をもらい、早速、申請し、1カ月ほどで支給されました(助成金の制度の有無はお住まいの自治体により異なります。医療機関、あるいはお住まいの保健センターなどご確認ください)。いま、Aさんはウィッグとうまく付き合いながら仕事を続けています。

つづく

保健師/看護師
石毛 陽子
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