妊娠・出産は女性にとって大きなライフイベントであるとともに、女性のからだにさまざまな変化をもたらします。赤ちゃんの成長に伴ってお腹が大きくなり、妊娠線ができたり、バストも妊娠前に比べてサイズアップし、皮下脂肪も多くなります。そして、見た目の変化だけでなく、実は乳がんを発症する確率が変化することをご存知でしょうか?ここでは、出産と乳がんの関係についてお話ししたいと思います。

■乳がんの発症率

乳がんは、日本人女性が最も多くかかるがんで、その割合は14人に1人となっています。そして、年間6万人以上の女性が乳がんと診断されており、年間1万3000人の方が乳がんによって亡くなっています。この発症率も死亡率も年々増加しており、決して他人事ではない病気です。

乳がんにかかる人が増加している理由として、食生活の欧米化のほか、妊娠・出産経験のある女性が減少していることがあげられています。なぜ、妊娠・出産経験が乳がんと関係があるのでしょうか?

■出産と乳がんの関係

さまざまな研究から、出産経験と乳がんの発症率には大きな関係があることがわかっています。乳がんにはさまざまなタイプがありますが、サブタイプという遺伝子の特徴による分類方法によって、ホルモン受容体陽性のものと、ホルモン受容体陰性のものに分けられます。

ホルモン受容体陽性乳がんは、女性ホルモンをえさに増殖するタイプの乳がんで、乳がん全体の6、7割を占めています。

女性ホルモンの変化が起きる、生理の回数が多い程、ホルモン受容体陽性乳がんのリスクが上がり、妊娠・出産によって生理のない期間が長いほど、リスクが下がることがわかっています。そのため、乳がんと出産との関係として、下記の内容が明らかになっています。

・出産経験のある女性は、出産経験のない女性と比べて乳がんの発症リスクが低い
・初産年齢が低く、出産回数が多い女性ほど乳がん発症リスクが減少する
・初産年齢が高い女性(30歳以上)では乳がん発症リスクが増加する

出生率が低下し、高齢出産が増えている現在、乳がんのリスクが高い状態に当てはまる方も少なくないでしょう。

■授乳と乳がんの関係

出産という一大イベントを終えた後、女性のからだは母乳を分泌するようになります。母乳の出方は人それぞれですので、完全母乳の場合もあれば、ミルクと混合の場合、ミルクのみの場合もあります。もし、母乳育児をされている場合には、授乳期間を長くすることをおすすめします。授乳期間が長いほど、ホルモン受容体陽性乳がんも、ホルモン受容体陰性乳がんも、発症リスクが低下することがわかっています。理由としては、授乳によって乳房の細胞が分化するため、がん化しにくくなるという説があります。

母乳は赤ちゃんに免疫を分け与えたり、赤ちゃんの状態に合った成分が分泌される、愛着形成に効果的など、メリットが非常に多いです。母乳の出方や、赤ちゃんの飲み方、ライフスタイルなどによりますが、可能であれば授乳期間を1年以上とれると理想的です。

■まとめ

乳がんの発症リスクは、出産と授乳によって低下すると言えますが、初産が30歳以上の場合には逆に上昇することがわかっています。20代のうちに出産し、子どもを多く産むことで、乳がんのリスクが減少すると言えますが、現在の日本では少数派といえるでしょう。出産・授乳経験や初産年齢だけで乳がんの発症が決まるということではありませんが、乳がんの発症リスクが気になる場合、この機会に乳がん検診を受けることをおすすめします。また、1年に1回は乳がん検診を受け、ご家庭でできるセルフチェックも定期的に行うようにしましょう。

看護師
広田 沙織
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