■がんは2人に1人がり患する時代

高齢化社会・生活様式の変化・医療の進歩により、2人に1人が「がん」にり患し、3人
に1人は「がん」で亡くなるというデータが報告されています。 1) そのため
、AYA(Adolescent and Young Adult)世代いわゆる思春期・若年の15歳~30歳前後か
ら、成人から90歳以上の超高齢者まで、さまざまなライフステージの患者さんががん治
療に通われています。

新規がん薬物療法の承認や、がん集学的治療(手術療法・放射線治療・薬物療法・緩和ケ
ア)の組み合わせにより、がん=死というイメージから、マラソンのランナーのように長
距離の戦いに挑む、がんサバイバーのイメージに変化しつつあります。

同じ「がん種」でも、がんの性格は個人で異なるため、治療法も異なります。例えてみる
と、同じ日に生まれた子どもたちも、成長するにしたがって、顔つきも性格も異なるのと
同じ原理です。実際の医療現場では、詳細な精密検査や手術で採取した検体の病理検査結
果・遺伝子検査結果等を踏まえ、患者さん一人ひとりのライフスタイルを尊重しながら、
より適切な治療法をガイドライン(標準治療)に照らし合わせて、主治医より治療について
提案されています。

■こころの変化

「がん」と告知された瞬間、どんなに気丈な性格でも、実際のこころは揺れ動いているも
のです。「どうして私ががんになるの?」「検査結果が間違っているに違いない」「毎年
健診を受けていたから、まさか私ががんになるはずはない」「診断が間違っているのでは
ないか」等、告知後の患者さんはさまざまな言葉や表情で表現されます。

1999年に精神科医エリザベス・キューブラロス著「死ぬ瞬間」 2) という本が発刊されまし
た。その中には、末期がん患者さんが病状を受け入れるまでにたどる心理過程が記されて
いますが、これは、末期がん患者さんのみならず、告知後のがん患者さんにも当てはまる
部分が多いように感じます。「病状の自覚-否認-怒り-取り引き-抑うつ-受容」。こ
れらの過程を複雑に行き来しながら、時につまずきながらも希望を見出して、時間をかけ
ながらがんと立ち向かっています。

病院によっては、精神腫瘍科(がん患者さんのこころのケアを専門とする医師)があります
。明智医師の記事 3) によりますと、がん患者さんの約10~30%の人に適応障害が認められる
と示されています。適切なストレスの対処がなされず、うまく気持ちのコントロールがつ
かない場合には、うつ病へ移行したり、正常な判断ができずに、従来受けられる可能性の
ある治療が受けられなくなったりする場合があります。

つらい気持ちはひとりで抱え込まずに、医療者、信頼できるご家族、職場の人と共有し、
早い段階で気持ちのつらさを軽減していくようにしましょう。「がん」と診断されたとき
は、誰もが正常な判断が難しい状況になります。そのため、精密検査や定期的な治療効果
判定結果説明の際は、ご家族または頼れる親族と外来にいらっしゃることをお勧めします

外来では、病状説明用紙や治療方針の説明書、使用する薬剤のパンフレット等を用いて
、「がん」の治療についてインフォームド・コンセントを行いますが、専門用語で理解が
難しい場合は、迷わずに主治医や医療スタッフへ確認し、納得した上で、治療に臨めるよ
うにして行きましょう。

■周りの人への伝え方

「がん」=不治の病、仕事をクビになるのではないか、他人にうつる病気ではないか?と
不安になることも少なくないと思われます。

家庭、仕事などの社会的役割を果たす中で、「がん」にり患したことで、重要な仕事から
外されたり、雇用期間を延長できなくなってしまった、家庭が崩壊してしまった、といっ
たつらい経験をされた患者さんに、15年以上の看護師人生の中で多く出会って来ました。

厚生労働省のホームページには、がん患者などの就業継続に関する支援の情報 4) が記載さ
れています。主治医に現在の病状、治療内容、就業が可能なのか、どれくらいの作業が可
能なのか、勤務軽減が必要なのか、休職が必要なのかを、よく相談した上で、職場の産業
看護師、産業医、信頼できる上司などに働き方について相談してみましょう。必要な際は
、診断書を書いてもらい、安心して働ける環境づくりをして行きましょう。

2019年に入り、がん医療に携わる医療者、がんサバイバーが活躍される職場の人事担当者
、産業医、地域の方、がんサバイバーが一同に会する機会に足を運びました。情報手段が
発達した現在でも、がんと共存しながら今までの役割を遂行していけるとことに、十分な
理解がされていないのが現状です。しかしながら、大手企業では、がんサバイバーの働き
方を工夫する取り組みがなされ始めています。

小さなお子さんがいらっしゃる場合は、「治療で見た目の変化が起きるかもしれないけれ
ど、今までのお父さん(お母さん)といっしょだよ」「治療でつらいときには力を貸して
ね」など、不自然に隠さずにコミュニケーションを図るようにしてみてください。

ご家族や地域の方、職場の人々へ、負担のない範囲内で「がん」の治療をしているため、
今までより少しの間、力を貸して欲しい、具体的に○○を手伝ってほしいというように働
きかけていくと、安心して治療に臨めるのではないかと感じています。

引用・参考文献

1) がん情報サービス ganjoho.jp 2019.1.30閲覧
2) エリザベス・キューブラロス:死ぬ瞬間.読売新聞社.1999
3) 日本精神神経学会ホームページ 
 明智龍男先生に「がん患者の精神的ケア」を訊く
  https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=42
  .2019.1.30閲覧
4) 厚生労働省ホームページ がん患者などの就業継続に関する記事
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/teichakushien/patient.html   .2019.1.30閲覧
5) 日本がん看護学会 監修 がん患者へのシームレスな療養支援.2015.3
6) 月刊Nursing 臨床現場の困ったを解決する看護理論.学研メディカル秀潤社.2017.10
7) メディカ出版 Yori-souがんナーシングVol9.No1

がん化学療法看護認定看護師
かみうせ まゆ
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