痛みの正体

人間誰しも生きている中で何らかの「痛み」を経験したことがあるはずです。私のつたない人生経験の中では、恥ずかしながら「親知らずを抜歯したこと」が最大の痛みです。このように書くと、他人から見たら「なんだ、そんなことか」という程度かもしれません。しかし、当事者の私としては、一人暮らしの心細い中で、出血が止まらなかったり痛みが強くなったりしたらどうしよう、食事や仕事はこのままできるのだろうか、などの不安感から一人枕をぬらしたことを覚えています。幸いにも痛み止めが功を奏し事なきを得たのですが、頬の腫れはそのままで翌日出勤したのを覚えています。

痛みとは、どのような理由であれ、程度であれ、その人のものであることに変わりありません。そして残念ながら、がんにも痛みはつきものです。痛みの原因は、がん自体の痛みや薬の副作用である口内炎などの体的な痛みが中心ですが、それだけではなく、仕事や家庭、金銭面などの社会的な痛み、さらには不安感・恐怖感などの心理的な痛みもあります。人によっては「なぜ自分がこんな病気にならなくてはいけないのか」という魂の痛みを持った人もいらっしゃるでしょう。このようなことを全て含めて「痛み」として表現されているのです。

いわゆる「緩和ケア」について

緩和ケアとは主にがんによる痛みを抱えている患者に対して必要な時に必要なケアを提供し、その人らしく生きていけるように支援する、ということです。先ほど申し上げた痛みは、ひとつひとつが独立した痛みなのではなく、お互いが関連し合っています。例えば体が痛ければ心も弱り不安が強くなったりする心の痛みにも通じる、というのはまさに人間の心身が一体であ
ることを物語っているでしょう。

緩和ケアとは、このような痛みや苦しみを全体から捉えて支援をしていくシステムであり、主治医だけではなく、さまざまな職種の医療者がチームとなって患者様の痛みをその人独自のものであるという視点で支援しています。

緩和ケアというとがんが進行してから、と思われがちですが、がんと診断された早い段階から受けることができますのでどのような痛みであっても我慢せず相談してください。どうやったら痛みを緩和できるかともに考えよりよい生活ができるように整えていきましょう。

痛みの伝え方

痛みについてどのように伝えたらよいか、迷うことがあるかもしれません。例えば体的な痛みの場合は、その原因によって痛み止めの対処が変わってきます。痛みとはその人のものであるがゆえに伝わりにくい場合もあるため、より具体的にわかりやすい方法を用います。

例えば痛みの強さでいえば、0~10のスケールの中で表現してみたり、痛みのタイミング(一日中か・どんな時に起こるか)痛みの場所(いつも同じところか・痛みの場所は変わるか)痛みの感じ方(ヒリヒリ・ジンジン・ズキズキ)などの言葉を用いて伝えると対処しやすいです。また、痛み止めを使用したときは痛みの変化について記録しておくと後々の参考になります。

いずれにしても痛みを我慢しない、ということがポイントです。特にお年を召されている人ですと、ギリギリまで我慢する人が多く、美徳としているものに「我慢はしないでください」というのも心苦しく感じますが、それでも少しでも楽になる方法があることをお伝えしその人に合った緩和ケアを考えていくのも看護師の役割です。

主に体の痛みについてお話しましたが、心理的な痛みや社会的な痛みであったとしても対処法をともに考え乗り越えていけるとよいです。看護師は、患者が訴えるさまざまな痛みを信じ、また痛みの変化についても耳を傾けています。

痛みの閾値を高める方法

痛みの閾値(いきち)とは痛みの感じ人のことなので、同じ痛みでも痛みの閾値を下げる要因を減らすと痛みの感じ方そのものを変えることができます。

適切な痛みコントロールができると、患者さんが「痛みに対処できる方法がある」と自信を持つことができ心のゆとりが痛みを下げることにもつながります。薬以外でも、睡眠や食事など基本的なニーズが満たされると、いつも同じ生活が送れることへの安心感につながります。

誰かがそばにいる、受け入れられているという安心感も痛みを和らげます。また、これは患者さんの嗜好にもよりますが、マッサージやアロマ、冷罨法(冷やす方法)、温罨法(温める方法)など「心地よい」と思うものを取り入れていくと痛みを和らげることにつながるのでいろいろ試してみるのもよいでしょう。ご家族にも協力してもらいながら自分に合う緩和ケアの方法が見つかるように、看護師も協力させていただきます。

看護師・保健師
舘野
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